第14話祭の誘い
ー優弥ー
五月も終わり、週末からは六月に入ろうとしている時。
先週あたりは千紗のストーカー(笑)の撃退で忙しかったが、ようやっと通常の仕事に戻った日のこと、少しの違和感を覚えた。
最初は、朝藤二郎様に会った時。
少し悩んでいたようなので声をかければ
『いや…ゴキさんの数がいつもより少なくて…』
と、自身の手の上に乗っけていたゴキさん(屋敷ではこの呼び方が定着している)を見つめている。
その時は、そうなのか、と流していた。
次に、調理場の隅で千紗と共におやつを食べていた時のこと。
千紗が珍しく話しかけてきたので、話を聞いてみれば
『刹那が今日、あまり髪のアレンジをさせてくれなかったんですよ』
と返ってくる。一瞬そんなこと…と微妙な顔になったと思うが、同時に珍しいとも思った。
千紗は刹那のことを妹のように可愛がっているし、刹那も千紗のことを先輩として、姉のような人として慕っている。
2人とも、短い自由時間もずっと共にいたはずだ。それを、拒絶らしき反応をするとは。
そしてついさっき。掃除をしていると、都華咲が話しかけてくる。
まとめれば、刹那がよそよそしいとのこと。
例えば?と聞いてみれば
『おやつのつまみ食いとか、誘っても来ないし。珍しく購買の商品を食べさせてくれなかったんですよ!熱でもあるのかな…ハッ!まさか、病気…いや、恋してる!?』
と言い出したのでハリセンでぶっ叩いた。
別に否定しているわけではないが、このテンションで刹那に聞きに行かれたらもっと距離を置かれるような気がしたので。
まぁ、藤二郎様、千紗、都華咲から話を聞いたわけだが。
変だ。
俺が変ではなく、刹那の様子がおかしい。
何かあったのだろうか。
___☁︎☃☁︎___
ー刹那ー
「刹那さん、お手紙ですよ」
「ありがとうございます、メイド長」
五月最終日。あの子の言っていた通り、手紙が届く。
差出人は、あの子こと【
手紙の中身は
「……よし。抜けは無しですね」
『蛍祭ダンスの部参加用紙』
ーーー
ーー
ー
5日前。部屋で読書をして過ごしていると、滅多に使わない私の携帯が着信音を鳴らした。
着信名を見てみれば、懐かしい名前。
そういえば、連絡先だけは交換していたな、と思い、恐る恐る通話ボタンを押す。
電話なんて全然しないので、少し怖かったんです…。
「あ、えっと、」
『あ、せっちゃん?』
「う、海ちゃん?」
電話越しに聞こえたのは、本当に懐かしい声。
少しの間、互いの近況報告をしていると、海ちゃんから話が来た。
『ねぇ、せっちゃん。六月の最初って用事ある?』
海ちゃんにそう聞かれ、スケジュール帳を確認する。
「六月の、最初?…あ、何もないよ。何かあったんですか?」
『うーんとね、せっちゃん、一つ頼みがあって…』
「うん?」
『六月にある、蛍祭に一緒に出て!!!』
ー
ーー
ーーー
「(うーん…何とか休暇は取れましたけど…まぁ、説明はこの手紙を見せれば良いですかね)」
朝一で届いた手紙を見ながら、メイド長たちの部屋へ向かう。
もちろん、前は見て歩いてます。
部屋へ着き、ノックをする。入室の許可が入り扉を開けると
「…あ、お話中でしたか。申し訳ありません」
藤二郎様と優弥さんが、小鳥遊筆頭と話をしていた。メイド長は机で執務中でした。
少し礼をしてメイド長の机へ向かう。
「メイド長」
「はい。あら、刹那さん」
「おはようございます。この前話した休暇の件についてなのですが…」
「休暇?」
「あ、はい」
手紙を差し出しながら言うと、意外にも藤二郎様が反応されました。
反射的に返事をすると、後ろでメイド長が笑う気配がします。
「ふふっ、刹那さん。あなたの休暇を認めます。が」
「はい」
「移動は
「?…何故ですか?」
「それはね…」
「この蛍祭、藤二郎様たちも参加されるからよ」
「「えっ」」
藤二郎と私の声が綺麗にかぶった。
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