第2話 悪魔のウレナ

 今日のバイトも終え、自宅に帰る。

 バイトしかしていないのでお金もあまりなく、今はアパート暮らしだ。

 今、飲食店と魔道具店の店長から正式に社員にならないかと誘われているのだが、どちらを選ぶべきか、実に悩ましい。


 さて、僕はささっと夕食を作りささっと食べる。

 そして僕は本棚に手を伸ばし一冊の本を取る。ここ最近はまっている小説だ。

 僕は椅子に腰掛け、読書にふける。


 チクタクチクタクと時計の針が進む音だけが部屋に残される。

 一時間ほど経った。


「ふぅ」


 僕は、そろそろ寝る時間なので、きりのいいところでしおりを挟み、本を閉じる。


「はぁー、今日も疲れた」

ボフッ


 僕はベッドに倒れ込む。


「きゃっ、もうテトは大胆だなぁ」

「……へ?」


 人がいる。声を聞きもしかしてと思い、布団をめくるとそこには悪魔がいた。

 彼女は悪魔のウレナさん。

 黒く短い髪に黒い悪魔のような翼。天使のリリスさんとは真逆の容姿だ。そう胸も……ない。

 だが、リリスさんを大人な女性とすれば、彼女は小悪魔系の少女だ。悪魔だけに。


「ウレナさん、なんでまたここに」


 そう彼女がベッドに潜り込んでいるのは今回に限ったことではない。これまでに幾度と鍵の閉められた僕の部屋に侵入して僕と添い寝しているのだ。

 朝目が覚めたら、側で裸で寝ていたこともある。子供のような容姿とはいえ十分な美少女なのだから勘弁してほしい。


「なんでって、テトが好きだから」

「からかわないでください」

「むぅー、本当なのに」


 彼女はいつもこうして僕をからかってくる。

 今だって僕に抱きついているし。


「じゃあ今日も一緒に寝よぉ」

「……僕だって男なんですよ」

「ふふ、もしかしてボクのこと襲うの?」

「しませんよ! そんなこと。ただ男と容易にこんなことしないでほしい、っていうか」

「心配してくれてるのぉ? 他の男とはこんなことしないよ、テトだけ」

「えっ」


 ということは僕だけ特別ということか。

 それに――、とウレナさんは続けて、


「テトなら、いいよ?」

「ッッ!?」


 ウレナさんが僕に近づき上目遣いで僕を見つめる。

 一瞬ドキッとしてしまった。


「……し、しませんからっ!」

「もぅ」


 僕はウレナさんから離れて、ベッドに身を預ける。

 ウレナさんもベッドに横たわり僕に抱きつく。


「おやすみ、テト」

「はい、おやすみなさい」


 恋人同士でもないのに、本当にこのままでいいのだろうか。


(まあ、いっか)


 僕は静かにまぶたを閉じる。

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