天使と悪魔の恋の争奪戦

シュタ・カリーナ

第1話 天使のリリス

 とある所に人間の少年がいた。

 彼は天使と悪魔から好かれていた。

 天使と悪魔は仲が悪かった。私の方が彼に好かれている、私の方が彼を幸せにできる。などと言い争っている。

 喧嘩しているところを見られれば幻滅するかもしれない、だから彼のいないところで喧嘩をしている。

 これは天使と悪魔の恋の争奪戦の話。


 ◇◇◇


 僕はテト。一般男性より身長が低いが20歳の大人だ。

 僕は魔道具店でバイトをしたり、飲食店でバイトをしたりして暮らしている。本当は冒険者になりたかったけど、筋肉もつかない僕の体では雑用が精一杯だ。雑用をするぐらいならとこうしてバイトをして生活している。しかしバイトはバイトでいろいろな人と触れ合えて中々楽しい。


 今日は飲食店でバイトだ。

 あまり人が来るような店ではなく落ち着いた雰囲気の店だ。


カランカラン

「いらっしゃいませー」

「また来ちゃった」

「リリスさん。またいつもの?」

「うん」


 彼女は天使のリリスさん。白く長い髪がなびき、日の光を浴びたことがないかのように肌が白い。そして一番目に映るのが、背中に生えた白く綺麗な翼。ただただ美しい。あと、どこがとは言わないがすごく大きい。

 天使が人間と生活するのも珍しくなく、彼女も結構な頻度でこの店に来ている。いわゆる常連というやつだ。

 僕は彼女がいつも頼んでいるオムライスを持って、彼女の座っている席に向かう。


「おまたせしました」

「ありがと。テト君も隣に座って?」

「え、でも」

「いいからいいから」


 仕方なくリリスさんの隣の席に座る。


「ふふっ」

「ッッ!?」


 彼女が僕に体を寄せて、体と羽で挟んでくる。彼女のいい匂いが僕の鼻孔を燻る。

 そんな僕に気にせず食事を始めるリリスさん。


「はい、あ〜ん」

「あ、あ〜ん」


 彼女はいつもこうして僕をからかってくる。

 そうこうして出来立てホヤホヤのカップルのようなことをしていたら、すぐにオムライスを完食した。


「じゃあ、また来るわね、テト君」

「はい、またのお越しを」

「はぁ、かわいいなぁ。えいっ」

「うぷっ」


 いきなり彼女に抱きつかれ、顔が彼女の大きな胸に埋もれてしまう。

 柔らかい……ってそうじゃなくてっ。

 僕は抵抗して胸の脅威から逃れる。胸囲だけに。


「ぷはっ。リリスさん、そのこういうのやめてくれませんか」

「ふふふ、照れてるテト君も可愛いなぁ」

「聞いてないし」

「じゃあね」

「ありがとうございました」


 彼女は店を出て、転移魔法で帰っていく。

 彼女も自分が美人だということを理解してほしい。理性を保つのが大変だ。

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