第3話 「聖剣の神命は」

「さぁ、マスター。俺を手に取って戦え。」

諦めて目を閉じた僕は、頭に響いてくる声に目を開いた。

奇跡の回避とは言った具合に身体が動いた。

「ヒューーーーーぅ。」

ウェアウルフの一撃を間一髪で交わす。そのまま、転がりながらリュックにたどり着く。

 「さぁ、マスター。俺を鞘から引き抜くのだ。」

常に語りかけてくる聖剣に心から頷きながら

(頼むよ。聖剣。僕に力を・・・)

「ぐるるぅぅふふ。」

ウェアウルフ達のあざ笑う声が聞こえてくる。

 (くる)

僕がそう思た次の瞬間にウェアウルフの斬撃が迫る。

「ぐるぅ・・・」

ウェアウルフの何が起こったのか分からないまま。

血が飛び出るとの同時に胴が真っ二つになったウェアウルフの死体が出来上がる。

「なんだ・・・これ・・・は・・。」

僕は聖剣を手に取り引き抜いていた。

聖剣は黙ったままだったが、聖剣の記憶なのか。魔法の投影魔術でも見ているような不思議な映像が頭の中に次から次に浮かんでくる。

 さらに不思議なことに、身体が動く今までない感覚で。

(聖剣に引っ張られているのかな)

少し臆したウェアウルフ達であったが

「ぐるうるぅるる。」

怒号を口走りながら再びハルヘイムに襲い掛かってくる。

「さぁ、マスター。蹴散らしてやろうぜぇ。」

ようやく、喋りだした聖剣に安堵しながら、剣を構え直すハルヘイム。

ウェアウルフ2体による連撃が襲ってくるが、剣撃をかわしつつ聖剣を振るう。

ウェアウルフの武器ごと真っ二つに斬り裂けていく。

死体が2体増える。

残ったウェアウルフは5体。だが、ハルヘイムの持つ剣が通常のものでない事を悟ると、撤退の体制を取り始めた。

「まてぇええ。」

ハルヘイムは叫んでいた。

(僕の二の前を踏ませるわけにはいけない。)

「捨て置けマスター。深い追いは死を招くぞ。」

と追撃しようとしたハルヘイムに、聖剣が諭す。

「今はマスターが覚醒したばかりだ。身体の負担が来るはずだ。今は待つのだ。」

静かに聖剣がハルヘイムに語りかけてくる。不思議と聖剣の静かな口調に冷静になっていくハルヘイムだった。

「うん、わかったよ。聖剣ブレイジング・スラッシュブレイド。」

「ようやく、呼んでくれたかマスターよ。我が神命を。

そう、我が名は聖剣ブレイジング・スラッシュブレイド」

「よろしくな。聖剣ブレイ・レイド。」

「なんだ。マスターそのへんてこな名前は・・」

「だって。長いから、呼びにくいもん。」

「まぁ、マスターが名づけるなら、致しかたない。」

聖剣とその主人の戦闘後の緊張感をほぐすような会話が続く。




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