野生の王国

 結果的(積極的ではないという意味で)減農薬栽培なので、うちの園芸スペースは、虫たちに大人気です。

 風の通り道になっていて、大型の蝶や七~八センチくらいあるバッタや蜂、その他大勢、一体いったい何処どこから来たんだろうという面々めんめんが横切っていきます。その虫たちをねらって、朝早くから小鳥たちが集まってきます。

 ジューンベリーの実は大人気です。

 つがいのヒヨドリが毎年、楽しみにしていて、意地いじきたなくも、まだ完全に赤くならないうちに、根こそぎしまいます。よっぽど好きらしく、この実がっている時は、私がベランダにいても、図々ずうずうしくも平気で食べています。がおしたらしく、フンも放題ほうだい、くつろぎきっていて、困ったなと思っていました。

 でも、彼らの楽園の日々は突然、終わりました。

 朝、ベランダに出てみたら、羽根や羽毛が盛大せいだいに散らばっている!

 このへんのカラスはウデがいいんです。

 飛んでいる小鳥も追いめて、空中でとらえて食べてしまう!

 おまけに巣作りの最中さいちゅう

 ……合掌がっしょう

 それからしばらくたって。

 ベランダの手すりの上に、骨が一本、置いてあります。

 肉は綺麗きれいある、カラカラの骨です。ちょうど、死んだヒヨドリの大腿骨だいたいこつくらいの大きさの……。

 気味悪きみわるく思い、つまんで、すぐゴミ箱に直行ちょっこう

 そうしたら、カラスがやってきて、何かを探している素振そぶり。

 一度ではありません、二度も来るのです。

(あーあ、お前のかよ、こんなトコに置いとくなよ……)

 仕方しかたなく、骨を元の場所に戻しました。

 カラスは又、戻ってきて、骨が戻されているのを確認しましたが、置いたままで持っていきません。

 人間の手にれたものはイヤなんだろうと思って、四~五日置いた後、捨てました。

 風化ふうかしてボロボロになり、欠片かけらが散らばり始めたからです。

 すると又、カラスが戻ってきて、骨が無いのを確認しています。

 私が庭仕事をしているすぐ脇の手すりに止まって、全然こわがる様子を見せないので、

「骨、無い、無いよ。」

 思わず声をかけると、わかったように飛び立ちました。

 ヒヨドリは、大胆だいたんな方はられてしまいましたが、残った大人おとなしいほう相変あいかわらず、ジューンベリーの実を食べにやってきていました。

 ところが、それから一週間もたたないうちに、朝、ベランダに出てみると又、羽が散らばっています。

(ああ、られちゃったんだ……)

 何気なにげなく手すりに寄りかかって、

「ギャアーッ‼」

 生々なまなましい鳥の趾骨しこつが一本、と手すりに止まっていて、テントウムシが一匹、かじりついていました。

 テントウムシって、可愛かわい顔してじつは、何か気に入らないことがあるとすぐ、みついてくる、狂暴きょうぼうなヤツですが、ほんと、肉食なんですね、驚き。鶏肉を与えて飼うことも出来できそうです。

 未練みれんたっぷりなテントウムシには、もう看板カンバンだよ、と言って、お引き取り願いました。ハエも宴会に参加したがっていたからです。

 骨は速攻そっこう、ゴミ箱行き。

 カラスは又、やってきて、骨が無いのを確認しています。

 何であんなもの残していくんだろう、と不思議がっていると、家族がネットで調べて、

「カラスの贈り物なんだって。挨拶あいさつして、危害を加えないようにお願いしているんだって。」

 この辺り、最近、ゴミは個別回収になっていて、カラスに荒らされることはなくなりました。

 カラスの縄張なわばりは密接みっせつしています。

 うちは、道路をへだてたビルの屋上の給水塔によく止まっているハシブトガラスの縄張りになっています。ベランダに来るのは、お母さんガラスとヒナのうち、ヒナの方のようです。

 うちのすぐ裏の畑は、ハシボソガラスの群れが、獲物えものの取り合いをしている殺伐さつばつとした環境です。

 カラスの世界もきびしそうです。

 そういえば、モミジ(鶏の足)って、中華圏じゃ、女子高生のオヤツなんだとか……。

 ギャーッとか言っちゃいましたが、カラスからすると、御馳走ごちそうを、大奮発だいふんぱつしておごってくれたのかも……。

 その翌日、ベランダで鳴き声がするので、見てみると、カラスが、サービスバルコニーの所で何か食べています。肉を食べくして皮だけになった小鳥のようです。

 そこで食べてもらっちゃ困るな、と思ったので、

「そこはダメだから、屋根(誰も上がってこられない所です)で食べて。」

と、身振みぶりで示したら、持って行って食べています。

 その翌日は、上の家のベランダで、小鳥を食べていました。羽毛が風に乗って、雪のように散ってきたから、わかったのです。

 それからも、手すりに止まって、大きな虫をくわえていたりします。前の日、ウロウロしていた大きな蜂かもしれません。

 朝、ベランダに、カラスの羽が落ちていることも、度々たびたびあります。早朝に一仕事ひとしごとしていったのでしょう。

 栽培しているミニトマトには手を付けません。羽毛が落ちていたので、近づいてながめてはいるようですが。

 サラダより、肉が好きなんだろう、と言うと、家族が激しく同意していました。

 裏の畑を根城ねじろにしているハシボソは、ミニトマトを少々、つまんでいるようです。

 カラスに食べられる鳥が可哀想かわいそうと思われるかたもおいででしょうが、私たちだって、鳥は勿論もちろん、牛や豚や魚類、人によっては馬や野生動物、爬虫類はちゅうるいまで殺して、良心りょうしん呵責無かしゃくなく食べています。

 が無いからでしょうか、スズメくらいの小さいサイズの鳥はらないようです。又、ハトは大きすぎるのでしょう。この辺に多く住む、中型ちゅうがたの、ヒヨドリやその仲間がおもみたいです。

 中型の鳥も、なかなかギャングです。

 餌場えさばにいる小さな鳥たちを追い払ってしまいますし、うちなんか、ムクドリに、十羽近くいた十姉妹じゅうしまつを、面白半分おもしろはんぶんにツツき殺されてしまいました。

 そこらじゅうにいる地味じみなヒヨドリは、日本固有こゆうで、世界的には非常に珍しい鳥らしいですが……。

 とりたてて動物好きというわけではありませんが、犬にはなつかれ、猫のマッサージ屋さんは多分たぶん天職てんしょくです。

 ちょっとマッサージをしてやった猫にはストーカーのように付きまとわれ、仔猫こねこひざで寝てしまうような私ですが、まさか、カラスにまで友達申請しんせいされるとは思ってもみませんでした。

 お空から見下みおろしているのは、神さまやお星さまだけじゃないんですね。

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