お覚悟召されい！

多肉植物

　いま流行（はや）りの多肉植物（たにくしょくぶつ）については、あまり語ることはできません。

　昔、サボテンを枯（か）らす女の人ことを『サボテン女（オンナ）』といっていました。

　サボテンみたいに手のかからないものさえ育てられない人のことを馬鹿（ばか）にしていうのですが、そうはいっても、サボテンを上手（うま）く育てている人って、この辺（へん）ではあまり見かけないです……いや、一人いた。

　うちの父でした。

　親指（おやゆび）の先程（さきほど）の鶯鳳玉（らんぽうぎょく）を持っていったら、何年か後には、グレープフルーツくらいの大きさにまで育ててましたっけ。

　まあ、鶯鳳玉って、育てやすい部類（ぶるい）に入るそうですが……。

　でもサボテンって、そもそも、日本の気候（きこう）に合っていないのじゃないのでしょうか。

　と思っている、多肉苦手（にがて）な私が育てられるものなら、どなたでも育てることができるでしょう。

　メキシコ原産（げんさん）の『星美人（ほしびじん）』と、南アフリカ原産の『ハオルチア』が、初心者（しょしんしゃ）向けだと思います。

　いずれも丸い葉の持（も）ち主（ぬし）です。

　水は、半月に一度くらい遣（や）ればいいです。でも忘れて、ひと月に一度でも大丈夫（だいじょうぶ）です。

　ちょっと葉が萎（しな）びちゃってるな、と思ったら水を遣るというのでもＯＫです。

　ベランダに置いておいて、うっかり雨に当ててしまっても、慌（あわ）てることはありません。

　水を遣らなくてもいい時期に、間違（まちが）って遣ってしまっても大丈夫です。

　水遣りの事ばかり書いていますが、多肉の仲間って、ほんとに水にうるさいんですよ。

　でもこの二種類は、適当（テキトー）でも死にません、安心です。

　ベランダの、時々日の当たる所に置きます。

　成長期に、化学肥料を少し遣れば、もっと喜びます。

『星美人』のピンクの花は房（ふさ）になっていて、順番に咲きます。なかなか可愛（かわい）いです。

　丸い葉は、ちょっと触（さわ）っただけでポロポロ落ちますが、その葉を、窪（くぼ）んだ方（ほう）を上にして、小舟（こぶね）を浮かべるように土の上に置いておくと、あら不思議（ふしぎ）、小さい芽が出てきて、増えていきます。

　うちでは、葡萄（ぶどう）の木の下で繁殖（はんしょく）しています。

　土の乾（かわ）き具合（ぐあい）が合（あ）っているみたいです。

『ハオルチア』は、色々な種類のある中の一種（いっしゅ）で、ドドソンオブツーサ、雫石（しずくいし）ともいいます。

　その名のとおり、葉の上部が透明（とうめい）な窓（まど）になっていて、日に透（す）かすと輝（かがや）いて綺麗（きれい）です。

　花は、なるほど、百合（ゆり）の仲間だなと思う形をしています。

　ものの本には、『要（い）らない花は早々（そうそう）に摘（つ）むこと』などと、無情（むじょう）なことが書いてあります。

　確かに見栄（みば）えのしない花ではありますけれど、本人（ほんにん）は要らない花だとは思っていないはずなんですが。

　もっとも、そういう私も、ゴミと間違（まちが）えて抜いてしまったことがあります……。

　ハオルチアの鉢は、考えていたものより一回（ひとまわ）り大きかったので、買うのをちょっとためらったのですが、お店の方（かた）が、

「大きい方（ほう）が育てやすいですよ。」

と教えてくれました。

　正解（せいかい）でした。

　どれを買ったらいいか、迷った時は、そういう選択（せんたく）もあります。