第1話 目覚め




「ん……」




明るさを感じ目を開けるといつもの無機質な天井ではなく木で出来ており天井の近くにある窓から日光が部屋を明るく照らしていた


背中への感触が柔らかい、ベットで寝ていたみたいだ




(ここ…は?いったいどうして、私は確かに胸を突かれて死んだはず………)




組織に見張られてるような圧迫感も感情制御をされている感覚もないが長く寝ていたのか、傷があるのか、体に痛みがあり重い。




(魔石が機能してない…?)




胴体から切り離されることがない限り、傷は重症であっても一晩で傷口が塞がり傷跡が薄く残る程度には治るはずだ、魔石が損傷して上手く機能していないのだろうか


そんな思考をめぐらせるが無気となりすぐにやめてしまう。




(……私、また死にそびれたのかな)




やっと死ぬことができると思っていたがまだこうして生きている


私たちは血がでていようが四肢がもがれていようが死ぬことは出来ない。


死ぬ方法は魔石を身体から切り離すか、魔石の機能を完全に停止させるため破壊するしかないのだ。そのような行為は自滅防止の為に自分自身では行えない。


虚しさを胸に抱き、周りの環境を確認すべく"サーチ"を試みる、魔石が損傷していても緊急用の索敵のためのエネルギーはわずかだが残っているはずだ




(…?)




妨害されている痕跡がないにもかかわらずなにも一つも分からなかった


"サーチ"使えない?

いや、エネルギー自体が消失している…?



予期しないことの連続で焦りが生じる



とりあえず目でみえる範囲だけでもと私は痛みのある体をなんとか動かし、上半身だけを起こして辺りを見渡す


1人で生活するには広い部屋の2辺に棚があり分厚い本がびっしりつめられており、床にもバラバラではないが不規則な位置に本が何冊も積み上げられており、足場が少なくなっている。


ドアは本棚のすぐそばにある。

ドアの上下2つに押すだけで開きそうな扉みたいなものがあった。ドアと同じ壁の所に1m半ぐらいの窓があり、窓が少し開いているのだろうか、閉じられたカーテンが少し揺れている。その動きにあわせ床や本に光が映る。


あとは特に気になった物はなく鏡と小さめのテーブル、椅子、今私がいるベットとタンスがあるぐらいだ、その全てが木で出来ている。無機質な組織の部屋でもボロ木とトタン板の集落の部屋でもない。


(木製の家具や家なんて初めて見た……)


現在のこの世界では戦争による様々な汚染により植物と動物はその身をその環境にあわせるために形は歪になり、猛毒をもつようになった


食料となる植物は空気洗浄がある施設か清め水がある所でしか育たない。そのため数が少なく口にできるのは組織の上層部か運良く清め水を見つけた集落ではないとむりだろう、他の者は人工で作った栄養剤かゼリーを食べるしかなかった。そんな状況で家具に使えるような質のよい木はまず無い



それなのに何故かこの部屋はほとんどその木のみで作られている




初めての汚染されていない木に興味を持ちベットの木の所に触ろうと身を動かす


その反動で髪が動き、焦せる気持ちが少し落ち着いたからか今までと異なることを認識した。




(え?……)




髪色を再度確認すべく髪を手にとる


私の髪は赤みの帯びた白髪だったはずだ

なのに髪の色は薄い赤紫色をしている


私は姿を確かめようとベットから立ち上がり、鏡へと向かい鏡の前に立つ



「!?」



目の前にいるのは私のはずなのに見知らない4歳ぐらいの少女がそこにいた

目は赤紫色で髪の毛の長さも胸ぐらいしかなく耳も人の形ではなく横に尖っている




(本当に…私?)




試しに手で耳や顔を触ってみる、手に触れられた感触はあり、耳も尖っている

体のあちこちも見てみると胸の所に生命維持装置である魔石は元からなかったようになく壊された痕跡も、傷口もない、手や足に包帯があるだけで耳以外は集落にいる何変哲もない少女と変わりはない



久しぶりの感情と意味不明な現状にどうすればいいのかわからず頭が混乱し動けなくなり、ずっと鏡の中にいる自分であろう少女を見つめる


コンコンッ

とドアを軽く叩く音がし、すぐにドアが開くと音がした。音がした方向に振り向くと




そこには銀色の目をした黒髪の少女がいた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る