第6話 古い赤い糸

戦国時代並の根回しや構想の展開があって、僕にこんな事態が起きるなんて思ってなかった。

「……もしもし。」

こんな辛辣な空気のグループ電話も初めてだ。

「シナ、話って何。」

僕は姉さんと一緒にいなかったことになってるので、あくまで、話ってなんなの?というすっとぼけをしなくてはいけない。

「俺……別れようと思ってる。」

「姉さんと?なんで、仲良さそうだったじゃん。」

そんなこと思ったことも無い。

「前、俺と価値観が合わないかもって話、深澤にしたじゃん。それも含め、ダラダラ付き合うのも良くないかなと思った。」

それを含めとか言いやがって。本当は浮気相手を選んだだけなんだろ?

「……。」

姉さんは何も話さない。まさかもう泣いてないよね……?

「別れよう。お互いそのほうがいい。」

本当にコイツは残酷だと思う。

お互い、なんて。お前にしかメリットないだろ。

「ふーん。」

姉さんが急に口を開く。

「いんじゃない。別に。」


空気が凍りついたことは言うまでもない。

「……じゃあ、別れるってことで。」

シナも思いのほかすんなりいった別れ話に驚いている。

そこでグループ通話が切れる。


……


「……もしもし?姉さん?」

「……。」

「大丈夫?」

「……。」

「……。」

そのまま1分くらい沈黙が続く。

「大丈夫に、決まってんでしょ。」

案外平気そうにさらっと答える。

「ねえ、なんで深澤くん必要だったの。今回の通話。いらないでしょ。」

事実だし、言いたいことはすごく分かるが、いらないでしょと本人に聞かれても困ってしまう。

「……僕は、シナの大事な友達なんだ。ただの友達じゃない。」

「は?知ってるけど。」


「多分、姉さんが思ってるようなことじゃないよ。」

「……は?」


全然理解できないんだけど。

そんな声が飛んできそうだった。


「今度いつ会える?空いてる日でいいから。」

「基本平日なら。」

さっきの話は疑問すぎて忘れ去ろうとしている。そのほうがいい。

「彼女がいても、会ってくれるでしょ?」

「姉さんが会いたいならいつでも会うよ。」

「ふふっ、ありがとっ。」

姉さんは悪ぶるけど、まだまだ子供で純粋だな、といつも思う。

「じゃあ、今日は寝な?しっかり休んでね。」




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