第5話 デッド オア アライブ……?

「姉さん、別れなよ。シナとは。」

「なんで。」

ベッドに横たわりながら姉さんの子供っぽい聞き方に動揺する。

「前、全部終わるって話したじゃん。」

「ああ、あの話。」

「うん。」

「なに、私が傷つくとか思ってる?シナに正式にフラれたら。」

「うん。」

顔をこちらにむけ、体をよじる。

「何それ、シナのこと本気で好きだけど、振られたら崩れるとでも?バカにしてんの。」

悪魔の視線に負けないって決めた。


「……シナはきっと、姉さんを選ばないよ。その原因を突き止めない限り、僕と付き合っても意味ないよ。」

一瞬、諦めたような顔をする。

「……それ、よく言われる。深澤くんが、シナのグルじゃないなら、私は私が可哀想でもいい。」

悪魔なのにリストカットみたいなことをする。

恐ろしい。

「姉さんに悪い所はなかったのかな?」

「それ聞いて、どうするの?」

シン、と静まり返る。ガバッと起き上がり仁王立ちする、悪魔。


「なに、グルなんでしょ。」

ー言えよー

そんな顔だ。


「……姉さん、俺は姉さんに幸せになって欲しいよ。それまでならどんなことにも付き合うよ。」


「ほんとね?嘘なら、わかってるよね。」

本気の脅しだ。

「嘘じゃないよ。おいで。」

手を広げ、悪魔を迎える。

「そんな怖い顔しなくていいんだよ……。姉さんだって、幸せになれる。」

優しく頭を撫でる。悪魔は決して涙を流さない。が、流しそうになって必死に堪える姿は一瞬ただの女の子に見える。

どっちが仮面なんだろう。


「私は絶対、幸せになれないって思ってる。」

僕の胸の中でボソボソと喋っている。それが心臓の底に反響して、

頭の中にズシンと重さを持って、

悲しい成分が広がり続ける。


「シナが別れるって言うまで私は浮気を続ける。」

「……傷つかない?絶対傷つくよ。」

「大丈夫に決まってるじゃん。」

暗示をかけてもダメだよ。


姉さんのスマホが着信音を立てる。

シナからだ。


「……もしもし。」

柔らかい口に指を当て、しーっ、とする。

俺といることは勿論内緒らしい。

「時間作ってほしい。深澤も入れて話そう。」

「……え?深澤くんも?なんで。」

「3人で話したい。」

そう言ってシナが沈黙を貫く。

「え、それ、私がいいって言わないと困るの?」

「……。」

困るらしい。

了承の旨を伝えた姉さんが電話を切る。

「は?深澤くんも?どういうこと……。」


ーお前、やっぱりー

そういう目が飛ぶ。


「姉さん、明日話そうか。」

「いや、今日でいい。」

「え……?」

「今日の夜、決着。私、負けないから。」






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