第3話 悪魔の角

「シナー、明日大学まで迎えいこうか、明日私全休なの。」

「え、いや……悪いからいいよ。」

姉さんはこの年で自分の車を持っている。家は絶対金持ちだ。


地獄のラーメン会が終わったあと、4人で電車で帰路についている。

「そか、ならいいや〜、シナにフラれちゃったよ〜深澤くん。」

軽いテンションで俺に話しかけてくる。

なんだかリアルだからやめてくれ……。目が笑ってないよ。

そう願ったのもつかの間、ヒールでふくらはぎあたりをチョンチョン、としてくる。

あ、悪魔の角が……。

「ねえ、アソんでよお〜……。」

姉さんの目が潤んでいる。

シ!シナに見られたらやばいって!

俺が泣かせたみたいになるし!

「ね、姉さん、ここじゃまずいよ。泣き止んで、ね?」

「別に、泣いてなんかないし。」

また別にって。嘘をつけ嘘を〜。

「深澤くんなら、わかるでしょ?私が、どんだけ……シナを……。」

わかるよ。怖いくらいに。

姉さんは今にもタバコを吸いたそうにポケットをもぞもぞしている。シナにバレないように。


泣いていたかと思うと、ふと顔を電車の床まで垂れ下がりそうに筋肉を脱力させた。

「でももういいの。」


ー悪魔ー


今日1日会っただけで何回そう思っただろうか。

良く言って、"愛の化身"だ。

「私、絶対深澤くんと付き合う。」


俺の気持ちを度外視しないでくれ、姉さん……。


そう思う。いつもだったら。


だけど、今回は思わなかった。


「シナに……言ったらどうなるかわかるよね。」

これは脅しじゃなくて。

「もう、ぜーんぶ終わり。」

そう、終わってしまう。

そのときは、

「シナが罪悪感で、私に、浮気してることを言うだろうし。私が初めて気づく振りをして泣いたらそれで全部。」

電車が駅につく。

姉さんとシナが、4人の中で最初に降りる。

姉さんは軽やかにひらひらっと手を振り去っていく。

「明日……会えるのかな?」

いがしに聞いてみる。

こんな状態で会ったらきっと流されてしまう。

「え、何お前、会えるのかなって。もしかして姉さんのこと気になるの?」

「ちっ違うよ、そうじゃないよ〜、全く〜そんな訳ないだろ。」

違う意味で気になるよ……気がかりでしかない……。



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