第2話 出会いのきっかけも映画でした。


.......帰りの電車の中.......


俺は帰りの電車の中で1人考え事をしていた。

あまりの不意打ちの多さに忘れていたことがあったのだ。

南條さんは学内では女神とか天使とか崇められるような人で、どこか人を遠ざけているような人だと.......思っていた。



.......1年前.......


「おい五代!」


「おん?」


ある昼休みのこと、俺に向かってやかましい声をかけた男。八神 健二は、喜々として俺の前の席に座って話しかけてきた。


「聞いたかよ五代!1組の久保田が南條さんに告白したって話。」


「知らない。」


「気になるだろ?」


「別に.......」


「まぁ、聞けよ」


そう無理やり話を進める八神。

俺は、耳だけかたむけて聞いていた。


「知っての通り、久保田はイケメンだろ?バスケ部のエースだ。人当たりはいいしな。」


「そうだな」


「だから、今回ばかりは女神様も落ちると思ったんだが.......」


「振られたのか?」


「その通り!」


なんで嬉しそうなんだよ.......


「あのイケメン久保田くんでも無理となると.......これは完全なる女神様だな.......崇めがいがあるぜ」


「崇める?」


何を言ってるんだ?相手は人間だぞ?


「だってよ、彼女、告白された相手にいつも申し訳なさそうに、でも優しくこう言うんだ。」


『ごめんなさい。あなたの気持ちにはお答えできません。』


「常套句じゃないか。」


何が女神様だ。そう思った俺だが次の八神の言葉に俺は少し納得した。


「そうなんだよ。けどよ、それを南條さんは入学してからほぼ毎週やってるんだ。告白して玉砕したのはこの学校の男子の約8割、そして残りの2割のうち1割は告白しようとして断念した。もしくは度胸のない奴。」


「最後の1割は?」


「お前みたいな恋愛に興味ありませんぶるやつだよ。」


酷いことを.......俺は恋愛より目の前の映画に気を取られるだけだ。


「あ、そうだ。五代!今日寄り道しようぜ?」


「やだ、今日はレンタル返しに行くんだ。」


最後にそんなやり取りをして八神は自分の席へと戻っていった。


.......現在.......


それから、俺も何度か遠巻きに南條さんを見たことがある。

彼女は誰にでも人当たり良く接していた。誰にでも優しく誰にでも向けられる微笑み。

きっと誰もが彼女に対して清楚だとか可憐だとかそんな単語を使いたがるだろう。

けど、俺が彼女に対して抱いたのはそんなイメージではなかった。

彼女の微笑みは、俺には貼り付けられたもののように感じていたから.......

けど、今日のはどこか違っていた。


「わっかんね.......」


俺は諦めて映画のことを考えることにした。



***



五代くんが、私のことを知っていた.......

それだけで今日はとても嬉しかった。

私が五代くんを知ったのは去年のある放課後のことだった。


.......1年前.......


その日の学校帰り、私は寄り道をした。


「多分今日ぐらいから1週間借りれるはず.......」


最寄りのレンタルビデオ屋さんに来ていた。

私の趣味は、映画鑑賞で昔から色んな映画を見ていた。

今日は、ある作品の新作を借りに来ていた。


「えっ.......と、クモーマン.......クモーマン.......」


昔から好きだったあるスーパーヒーローの映画。

彼はあまり人と関わろうとしない性格だけどその正義感は強くて困ってる人を助けることを厭わないヒーローだった。

私はそんなクモーマンにすごく憧れていたし、今でも大好きなヒーローだった。


「あ、見つけた!」


やっとお目当てのDVDに手をかけようとしたその時、既に前にいた別の客によって取られてしまう。

最後の一本だった。

今日は、諦めるよう.......


そうとぼとぼと歩み始める私はあまりのショックに前をよく見ていなかった。そのせいか、目の前の三段ほどの段差に気が付かなかったし、更には前の人影にも気づかなかった。


「きゃっ!」


私はそのまま前の人影にぶつかりその勢いで段差に足が引っかかりそのまま前に傾く。

そしてその勢いで倒れるのかと思った。

しかし、その衝撃は私の身体に来ることは無かった。

代わりに、私は二本の腕に支えられていたのだった。


「大丈夫?」


「え?は、はい。」


「すいません。前見てなくて。」


制服?私と同じ学校?助けられた?ぶつかった?転んでない?

整理する情報は多く脳内は思考に追いついていなかった。

この時、助けてくれたのが五代くんだということも私はこの時、知らなかった。


「良かった。立てる?」


「はい。ありがとう.......ございます。」


「あ、そんな!気にしないで!」


私はそのまま頭を下げてお礼をした。

その時、私は彼の手元に目がいった。

その手には、クモーマンのDVDが握られていたのだ。

何秒かした頃、いつまでも頭を上げずにいクモーマンのDVDに釘付けになっていた私を奇妙に思ったのか、五代くんは声をかけてきた。


「.......?どうかしたんですか?」


「え?あ、いや.......」


「もしかして、クモーマンお好きなんですか?」


私は何か誤魔化そうと視線をずらす。

しかし、当の彼には視線の先が何か確信したらしか。


「ちょっと待っててください。」


そう言って店員のカウンターの方まで向かった。

何をしているのだろう?と私は遠巻きに覗いて見た。

五代くんは、店員さんと何言か話した後にクモーマンのDVDを持って戻ってきた。


「あの、もし良ければ。」


「え?」


彼は突然DVDを差し出してきた。


「見た感じ同じ学校みたいだし、更新したから、どうぞ。」


「あ、いやそんな!申し訳ないですよ!」


「ここ、新作でも何日かすれば1週間借りれるもんね。」


「え?」


「出たばかりの一日よりも何日か待って一週間は楽しみたいじゃないですか。」


そう言って彼はDVDを私の手に置く。


「返却ボックスに入れてもらえばいいので。今日のお詫びです。じゃあ!」


そうして彼は私の返事を待たずに帰っていきました。


私の趣味はあまり人と共有できるほど王道ではないと思う。

映画鑑賞って幅は広いけどジャンルとか限られるから。

でも、さっきまでいた彼はきっと同じ趣味なんだと思った。

いつかまた話してみたい。

そんなふうに思いながら、私はDVDを持って家に帰った。


翌日、私が教室に入ろうとした時、隣のクラスに入っていく彼の姿を目撃しました。

彼は、私の方を見ると

その時の彼の笑顔は、私の頭に残って離れませんでした。


.......現在.......


今、五代くんとは同じクラスだけど。

五代くんが当時のことを覚えてるかは分からないけど。

せっかく同じクラスになれたんだ!

もっと仲良くしたい!.......けど、どうしたらいいんだろう!!


私は1人頭を抱えたのであった。

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