経緯の話(4)
ジョニーは乞食だ。
毎日公園や路地裏でごみを漁り、売りさばいた鉄くずで飢えをしのいでいる。
「寒っ」
この前、橋の下で首をつっていた死体から失敬した上着の前を掻き合わせ、ジョニーはずると赤っ鼻をすする。
冬が本格化する前に良い拾い物をした。死体になってたおっさんだって、死んでしまえばもう寒くは無いのだ。墓の下に行くよりも有効活用したほうが世の中の為ってもんだ。
すっかり癖になった、ポケットの中の石を親指の腹で擦る。
小銭でも入っていないかと漁ったポケットの中には、しけたことに石ころが一つ入っているだけだった。
キラキラした透明な石の中に、青い石が入っているそれは、ガキの頃に集めていたビー玉を思い起こさせて、ジョニーをほんの僅かばかりの郷愁に浸らせた。
(あの頃は良かったなぁ)
公園のごみ箱の中から、売れそうな缶を引っ張り出しながらジョニーは思う。
(それに比べて、今の俺ときたら……いや、良いさ、もうしょうがねぇんだ)
時折ある炊き出しの列に並んだり、乞食仲間とどこぞの店のごみ箱に食べ物があっただとか、どこはうるさく監視されるだとかの情報を交換したり。そういう風にして老いて死んでゆく。それはもうどうしようもないことだ。
親指で、ポケットの中の石を擦る。
『君は別離を望まないのですね』
「今のまんまで十分さぁ」
ジョニーは一人笑う。
「別れられるようなものなんざ、一つも持ってねぇしなぁ」
ジョニーは独り笑う。
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