第2話 ネコ

 どこをどう逃げたものやら覚えていないが、気がつくと周囲の風景は、見覚えのあるものに戻っていた。どうやら神様の世界を脱出することには成功したらしい。

 人気のない河原でひと息ついていると、いつのまにか隣にイケメンが座り、肩を寄せてきていた。とっさに身を引いた私に

「そんな警戒しないで欲しいニャ」

 そう言って、顔を洗うように手を動かす。なるほど、今度はネコか。

「ボクは別に、地上の覇者にニャんかニャりたくニャいニャ。むしろ、お前たち人間と、今のイイ関係を続けていきたいニャ」

 ネコは飼い主を下僕と思っているという説があるが、彼の言葉と態度からは、確かにその気配が感じられる。

「ボクを選んでくれれば、神さまと交渉して、人間が生き残れるようにしてあげてもいいニャン」

 あざとい語尾の誘惑に、私はぐらっときた。確かに、このままいつまでもイケメン動物たちから逃げ続けることができるかどうかはわからない。それならここで、このネコの申し出を受けてしまうのも一案だ。

 いつの間にか、私の膝枕でゴロゴロと喉を鳴らしているネコの頭を、私は撫でようとしてーーはっとした。

「……ごめん、やっぱ無理」

「ニャ???」

 ビックリしたネコのシッポ(はあった)を、私は思い切り引っ張った。

「フギャー!!!」

 悲鳴を挙げるネコを突き飛ばして、私は全力で逃げ出した。

 だってネコのペニスは、挿入すると、多数のトゲが飛び出して、膣に突き刺さるのだ。動物に詳しい私は知っている。

 ネコには当たり前のことかもしれないけど、処女の私には無理!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る