第19話 質問タイム 中
「探索者になりたいのか」と聞いて眉をしかめたナターリエの反応。それを見てレオンはやはり自分のギフトでは厳しいのかと思う。
「そうですね、借金を返済する一つの方法として検討できればとは考えています。僕のギフトがあれば迷宮から素材を沢山持ち帰ることが出来ますし利益が見込めるならば、といった感じですかね。年齢の件や適正の問題もありますから……さすがに何の展望もなく探索者になれば死ぬだけでしょうからそれを判断するためにも情報が欲しくて」
「そう、さすがに何も考えずに飛び込むってわけじゃないのね。ただ私の知る限りレオン君のようなギフトの構成で探索者になった人は聞いたことがないわ。モンスターと戦うことが前提になるからどうしても戦闘系や魔術系のギフトが必要になるしね。それを持っておらず最低限の自衛も出来ないようなら足手まとい……場合によっては寄生扱いされるわね。それに迷宮のシステムとしてパーティーの上限は6人までと決まっているの。だから荷物を多く持てるっていうのも確かに魅力的なんだけど、貴重な戦力の枠を削ってまでパーティーに入れたいと思う人はなかなかいないと思うわよ」
「そうなんですね。けど……すみません、そもそもなんですが僕はその戦闘系とか魔術系のギフトっていうのが分かってなくて、どうしてもなければ無理なんでしょうか?」
「えっ?……って、そうか。この都市に住んでるわけでもなく、探索者じゃなくて調合士の子供なんだからレオン君が知ってるわけないよね。ごめんね、なんか落ち着いて話すからすっかり普段通り話してるような感覚になってたわ。私の周りって探索者関係ばかりだからつい……じゃあちょっと長くなるけど説明するわね」
そう言ってナターリエが教えてくれたことをまとめると
・この世界の人間は生まれつき1~3つのギフトを持って生まれて来る。たまに後天的に新しいギフトを習得することがある。
・ギフトを使うと魔力を消費する。また少し訓練すればだれでもその魔力を利用して身体強化を行うことが出来る。
・ギフトは大きくは3系統、6種類に分けられる。
戦闘系、魔術系、一般系の3系統
さらに戦闘系は武技と付与、魔術系は放出魔法と補助魔法、一般系は特殊魔法と特殊技能の計6種類に分けられる。
・戦闘系のギフトを持つ人は身体強化が得意で強化率が高くなる。魔術系は魔力量が多く基礎魔法を使える。一般系は記憶力や計算能力を強化できる。
・複数の系統のギフトを持つことは出来るが、武技・付与・放出魔法・補助魔法・特殊魔法・特殊技能の6種類のギフトは隣り合った種類のギフトしか持てない。例えば武技のギフトを使える人間は付与、特殊技能の最大3種類のギフトを持てる可能性がある。
・6種類のギフトの特徴は
武技系……戦闘時において特殊な効果を発揮するギフト
※空歩、挑発、鉄壁、気配遮断など
付与系……武器に魔力を通して、強化や特殊効果付与、遠距離攻撃を行うギフト
※フレイムインパクト(打撃強化)、アイスエッジ(切断力強化)、ウインドブレード(遠距離攻撃)など
放出魔法系……魔力によってエネルギー生み出したり、特定のものを操作したりする
※火魔法、水魔法、雷魔法など
補助魔法系……生物の体に直接作用する魔法
※回復魔法、バフ、デバフ系魔法、植物魔法など
特殊魔法系……上記のどちらにも属さない魔法
※調合魔法、インベントリ、念写魔法など
特殊技能系……戦闘には関係なく主に生活や仕事の中で効果を発揮するギフト
※判別眼、瞬間記憶、土壌精査など
一通りギフトに関する説明を終えるとナターリエは一言ことわってから席を外した。
その間にレオンは彼女に聞いたことを整理することにした。
この分類だとレオンのギフトは共に特殊魔法系だ。
そして探索者がほぼ戦闘系と魔術系しかいない理由もおおよそ分かった。
しかしその理由が理解できたからこそレオンは自分も探索者になれるのではないかと思った……思ってしまった。
前世が日本人であったレオン。どうやら生前の彼はとてもファンタジーが好きだったようだ。しかし日本人としての自我が芽生えてから今までは生き残る方法を考えることに精一杯、とても異世界を楽しむなんてことは考えられなかった。
いや、考えないようにしていただけで実際は興味を抑えられずに、自衛のためだと言い訳しながら色々とギフトについて検証し、今も借金返済のための手段だといいながら探索者やギフトについてナターリエに聞いている。
そんなレオンの前に突然探索者への道が見えてしまった。そうなるともう欲求を抑える術はなかった。
不適格といわれるギフトで探索者を目指すなんてギャンブルみたいな道だ。しかしせっかく異世界に生まれ変わっての二度目の人生なのだ。
それにこの世界で唯一自分を気にかけてくれていた母親はもういない。
残るのは母に代わる労働力としてしか自分に興味のない父親と悪意しか感じないムゼッティ商会、憐れんだ目を向けつつも関わらないように距離を取る街の住人達。
断ち切るのには何の未練もわかないようなしがらみしかない。
(トーレス家に生まれ育ててもらったのだからケジメとして借金はどうにかしよう。けど義理を果たすのはそこまでだ。それが終わったら好きに生きるか)
こうしてレオンは探索者になることを決心するのであった。
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