第6話 拾われました

気が付いたらベッドの上で目覚めていた。


―ベッド!?


帰ってきたのか!?

いや違う?

身体は鳥のままだ?

ここ家の中だよな?


―分からない。


ヤツと戦って、川に流されながら兄弟達の

巣立ちを見守って?

意識を失ったハズだよな?

もしかするとこの世界って人が居るのか?

だとしたら神様は意地悪だな!

人に転生させてくれよ!


―周りを見渡して見た。


造りはログハウスのまんまだ。

木のテーブルに箪笥にベッドに?

カナダ辺りのザ・カントリー!って感じだ。


たぶんかなり文化の高い人類がいるんだろうけど、青い肌だったり、腕が4本あったり、したらヤバイな!

異世界恐るべし!

なんてな?探してみよっかな?


部屋のドアノブを爪で回して開けてみた。

そう言えば、ドアノブの位置とかベッドの大きさとか、記憶にあるものと変わらない。

身長5メートルの人類とかではないみたいだよ!良かった良かった。


部屋の外に出ると木の廊下に

扉がいくつか見える。


―誰か居ないかな?


一番左のドアを開けてみた。


中で腰掛けてた人と目があった。輝くような金髪に碧眼。耳は長くとっても美人なお姉さんがいた。

いわゆる、ファンタジーで見るエルフのまんまな人だったりして。

下に視線を落とす。

胸は慎ましい。

あっ!でもそれなりにあるからな!

更に下に視線を落とすと?


―あれ?


もしかして下着おろしてますか?

すみません。トイレには鍵をかけて入った方が良いですよ?


―悲鳴が家中に響き渡った。



◆◆◆



あらら?人にあった嬉しさで、ちょっとデリカシーに欠ける真似をしてしまった。

お姉さんは下着を下ろしたまんま、

トイレの窓から外に逃げ出してしまった。

お尻丸見えでした。すみません。


あっ!せっかくベッドを貸して貰ったのに印象最悪じゃないか?

何とかお礼言わないと!

玄関どこだ?どこだ?

あっ!あったよ!


とりあえず外に出てみた。

おおっ!人の手が入った森って感じだよ!

落ち着きますな!

原生林の圧迫感とは大違いだよ!


さて、お姉さんはどこだ?

あっ!いたいた!


腰が抜けてしまったのか、まだよつん這いで逃げていた。

近くまで駆け寄ってみた。

「お姉さんごめんな」(グェエエ)

すると、お姉さんは横たわり泣き出してしまったではないですか?


どうしたんですか!?どこか痛い所でも?

ほっとく事も出来ないし、困ったな?


「お姉ちゃん?どうしたの!?」


森から少女が飛びだして来た。

お姉さんを小さくしてポニーテールにした少女がお姉さんに駆け寄ると、背中をさすり始めた。


まぁ、そうだとは思ったけど、少女が必死にお姉さんに語りかけてる言葉が全然わからないな。

トイレ覗いてしまった事謝りたかったんだけど、これじゃ無理だよな。


俺は足の爪を使って日本語で地面に

―『ごめんね』

と書き残した。



◆◆◆



家の食堂のような場所に戻って来ました。

お姉さんと少女はちょっと言い争いをしています。俺のせいでしょうか?

「もう!お姉ちゃんに言ったよね?鳥を拾って介抱してるからって!」

「小鳥かと思ったのよ!まさか魔獣だとは思いません!元居た場所に捨てて来なさい!」

お茶セットがある。

両翼の爪でポットを持ち上げてカップに注いで飲んでみた。


―あちゃちゃ!


嘴だとフーフー出来ないんだった!

「ぶふっ!」

それを見ていたお姉さんは吹き出していた。

ん?なんか空気和みました?

はぁっ…。お茶美味しい。

「見て分かる通り悪い子じゃないでしょ!ねぇ!飼って良いよね!」

うーん?感じ的に飼って良い?

みたいな感じかな?

けど…。

家のガラスに映った自分の顔を見てみた。


―めっちゃこわっ!


もはや恐竜だよ恐竜!

父ちゃんと母ちゃんと兄弟達が可愛い顔してたから、自分もそうだと思ってたけど、ヤバイな?無理だわ。自分だったら真っ先に逃げだしてるよ。


―さっきのお姉さんと同じになるな。きっと


泣いてた理由も分かったよ。

でも、文化的な生活良いな。

何とか自分アピールをせねば!


「グルルル…」


ん?犬が外にいる。番犬とか居るのか?

と思ったら2人の様子がおかしいですよ?

脅えてるのかな。


「バンダースナッチ!また来たみたい!お姉ちゃん。結界準備して!」

少女が槍を持って扉に近づいて行く?

敵なのか?犬が敵?犬が吠えてる相手が敵?

分かんないな?黙視で確認しよ。


―ガチャリ。


扉を開けて外に出てみた。

「ちょっ?何してるの!嘘?バンダースナッチが6匹?冗談でしょ…。」

少女も飛び出して来た。

「待ちなさいフィン!家に入りなさい!ひっ…。」

それに釣られてお姉さんも飛び出して来る。

皆出てきたね。待ってれば良かったのに?


―ありゃ?野犬じゃないか。数は6か。敵意あり。ピリピリ来る脅威無し。


―うん。2人はコイツらに怯えてる。


この場合は殲滅して自分の有用性をアピールするのが良いな!


―加速!


両翼から黒い粒子が吹き出す!

まずは3体の前衛1番右から!

するりと近付くと翼爪で首を落とす。

左へクイックターン。2体の首に足爪。空中で回転して投げる!頸椎の破壊を確認。

中衛2体の真ん中に着地。両翼の爪で2体同時に首を落とす。

リーダーが逃走。本来なら逃がす所だけど

この2人を殺す可能性のあるお前は逃がさない。ジャンプして加速!

足爪で頭を地面に押し付けて頸椎を折る。


―終わりだ。ホームにいた野犬共に比べたら、迫力不足も良いところだよ?


―時間にして5秒です。


どうですかお2人共!一家に1羽!

とても有用な番犬ならぬ番鳥と

なっておりますよ!

いかがですかっ!


―後ろを振り向くと2人震えながら抱き合っていた?何なんだろう?


―ここは目を輝かせて俺に抱きついて来る場面じゃないのですか?










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