第2話 ようやく目が開いたよ
生まれて3日目。
ようやく目が開いたよ。
まだ霞んで見え難かったけど周りを見回してみた。
あれっ?視界がめちゃくちゃ広い?
おかしい?いや、おかしく無いな!
鳥ってこんな視界してるのか!
直径1メートル位、高さ2メートル位かな?木の洞の中に4羽の兄弟達がいた。
床には細い枝で編まれた寝床。
そこには羽毛が敷き詰められていた。
嘴で突っつきまくって確認したイメージとの誤差はないな?
違いがあるとすれば、
兄弟達はみんな肌色の身体に真っ白な羽毛が生えているのに、自分は真っ黒な身体に真っ黒な羽毛をしていた?
大人になったら同じになるのか?
う~ん?まぁいいか。
それじゃ外はどうなってるかな?
節穴から外を覗いてみたんだが、
理解出来なかった。
まずは、空には島が浮いてた?
下を見ると遥か眼下に川が流れていた?
そして、遠くに
山よりも高い木のシルエットが見えた?
本当に理解出来なかった。
意味が分からないんですけど?
まだ目は本調子ではないみたいだな?
巣穴に引っ込んだ。
この羽音は母ちゃんだな。
お帰り母ちゃん。
ソレなに?
丸々と太った芋虫を咥えていた…。
こっちに来る!まさか!?
―あ゛~~~…!
お前か!クリーミィーな正体は!
味は一番美味しい!美味しいんだ!
でもな?でもな!?
俺は鳥に生まれたんだ…。再認識した…。
◆◆◆
生まれて4日目。
おおっ!視界がくっきり。
バッチリ機能してくれてますね!
良かった!これが普通の視界だな。
色彩もしっかりしてるわ~。
そして、兄弟達と自分が違うのをしっかり認識してしまった。明らかに違う種類だ…。
兄弟達の羽根には爪はない。そして、
明らかに成長速度が違う。
なんだか俺の成長速度は異常に早い?
すでに羽根も生え始めてるんだよな。
なんだか透明な膜に覆われた爪楊枝みたいなのが生えて来てるんだよ。
これがまた痒いんだ。父ちゃんと母ちゃんに膜を取って貰ったら、中に羽根が入ってるんだ。
ああっ!羽根だけ見たら『恐鳥』ってヤツに近いんだ!
兄弟達は普通の鳥だよな。
何で俺みたいなのが混じってるんだ?
―託卵てヤツか!
俺の本当の両親はどこ行きやがった!
ふざけんなよ!ネグレクトかよ!
カッコウってあれだろ?生まれたら自分以外の雛を巣から落とすんだろ?
俺の人としての倫理に反してるよ!
くそっ!
俺の本当の両親見掛けたらぶっ飛ばす!
ふぅ!怒ると腹が減るな。
父ちゃんが帰ってきたな?
飯くれ父ちゃん。
―?
待って父ちゃん?その黒光りする昆虫はなに?何でこっち来るの?ヤメて!?
―あ゛~~~…。
触覚と足の正体は…お前…か…。
ツラい。精神的にツラい。
早く大人になりたい。早く巣立ちたい。
◆◆◆
生まれて5日目。
精神的ダメージから立ち直る。
何とか父ちゃんの下から這い出すと
節穴から外を覗いて見た。
変わってないじゃん!凄いな!
島が浮いてるし、でっかい木も見える。
ここはどんな世界だよ?
どう考えても浮いてる島と雲に届く樹木っておかしいよな?
常識が削られていくよ…。
―間違いないわ~。
日本じゃないよ。それどころか、地球でもない。凄い所に来てしまったみたいだ?
うっ?遠くを見すぎたせいか気持ち悪い?
この目ってまだ慣らし段階みたいだ。
近くに視点を戻しとこう。
巣穴の巨木って崖の中腹から
生えてるみたいだな。
だからこんなに張り出してるのか。
下を覗いてみた。怖すぎる!
絶対に俺、空飛べない!
下見るだけで足がすくむんだから間違いない。多分10階建てのビルの屋上から下を見た感じがする。
でもな?でもな?空に浮いてるあの島。興味あるんだよな?行ってみたいな~。
父ちゃん?あの島行ったことある?
聞いてみたが、不思議そうな顔をされただけだった。
意志疎通ってのは難しいな。
父ちゃん。そんなに見つめなくても
糞は外にするよ?
◆◆◆
生まれて6日目。
今日は巣穴に襲撃があった。
どっから来たのか知らないけど、
2メートルはあろうかという蛇が近付いて来たんだよ。
ヤバい!そう思ったんだけど、父ちゃんと母ちゃんが一瞬の内に空高くに蛇を持ち上げて
眼下の河原に落としたのさ!
凄かったね!
そしたら、父ちゃんが死んだ蛇を巣穴に持って入ったんだよね。食べろって事かな?
兄弟達はまだ食べれなかったけど俺は臭みのある生肉を美味しく頂いたよ。
父ちゃんと母ちゃんも食べてたよ。
肉食系なんだ。
なるほど。狩りが上手いはずだ。
うん。虫よりは良い!虫は駄目だ!
◆◆◆
生まれて7日目。
なんだか普通の鳥みたく、羽根がキレイに生え揃ったな?
後は筋力さえつけば、
飛べそうな気がしてきた!
見てよこの爪!鋭いのなんのって!
もしかして俺って凄く強い鳥なんじゃなかろうか?
木の肌に爪を引っ掛けて懸垂してみた!
身体が軽すぎて意味ありませんでした。
う~ん?尾羽まで入れて 40センチ位か?
真っ黒い体色の尾羽の短い
始祖鳥って感じか?
たったの一週間でとんでもなくデカくなってしまった。父ちゃん母ちゃんごめん。
エサ大変だよな?
お礼に見よう見まねで父ちゃんと母ちゃんの毛繕いをしてあげた。
なるほど。一本の羽根の軸から出る無数の枝を整えて、一枚の羽根にするのか!
気持ち良かったみたいだ。
何、日頃のお礼ですよ。
―うん。意志疎通できたねよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます