2020/06/23AM05:51
2020/06/23AM05:51
「自棄っぱちで積木崩すなよ」
言葉面の割に慈愛をふんだんに盛った声が背中越しに響く。
「…誤解せんで欲しいね」
誤解、そうとも見当違いも甚だしい一言だ。許しがたい事だ。他の全てが其れを為してもお前だけは俺を分かっていなきゃあいけないよ。
「何を自棄になろう事が有るってんだ?今俺は双手を上げて幸福を享受してるんだ、水を差すのは感心できない」
第一原因が何だと言いたいんだ。取り残された寂寥に潰されると?俺こそが周囲に水を差すまいと言い訳して自裁に及ばない情けなさに我慢がならない?
冗談にも程があらぁ、斯様に高潔なら過日早々に決着を見ただろう。俺以外の誰かが俺の潰れた遺骸を前にな!
「自棄でもないなら誰かを恨めば良いか?」
そりゃ死に目に会わせなかった親族か?本気で探すのを怖がった間抜けな自分か?全て投げ捨てて飛び込んで来なかったお前か?其れこそ御笑い草だろう。
三度目を衷心祈って待ち続けてるのがただの意地や諦感であろう筈がない。常から言う通り此れは信心だ。他に何一つ持ち合わせの無い男がたった一つ人生に提起するものだ。今更お前の「一抜けた」なんて許容しようも無い。分かってて進めと言うなら、それは耐えられない。
「気ぃ悪いや、今日はもう寝るぞ」
返事はない、それが当たり前。涙どころか自嘲笑も枯れ果てれば次には何が湧いてくるか分かっただけが今日の収穫だ。
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