【6-5】ポイントD 中
【第6章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700428954319651
【地図】ヴァナヘイム国
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16816927859849819644
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ヴァナヘイム軍は、ケルムト渓谷という天然の堀の南北に、各部隊の敗残兵を無秩序に並べていただけである。そこかしこに、兵力のダマができ、全体的にムラが生じてばかりいた。
密をかわし、
「そこで、我らが着目していたのが、この『ポイントD』なのです」
白手袋をはめた部下の指に合わせて、女上司も視線を動かす。
トリルハイム城の南東、帝国軍右翼が展開する先に、ケルムト渓谷の一部を
描かれた山々に
「……この渓谷沿いには、一定数の部隊が通行できるだけの
それを北上していけば、王都への街道へ抜け、そのままノーアトゥーンを最短で抜けることができると、紅髪の部下は結ぶ。
「ここには、敵の厚い備えがあったはずだが」
自軍に最も近い区域である。エリウも敵の様子は把握していた。
獣道とやらの有無とは関係ないだろうが、ヴァ軍はかなりの数でこちらに圧力をかけてきている。
「もちろん、敵もこの地域に守備兵を充分に展開しておりましたが、それは『置いていた』という表現の方が的確でした」
ケルムト渓谷の南北に無秩序に並べられた他の戦力と、ここも同じなのだと紅髪の参謀は言う。
連戦に疲れ果てた彼らが、本来の力を発揮できるか否かなど、分析するまでもない、と。
「しかし、この区域を束ねるのは、アルヴァ=オーズだったはずだが――」
いましがた示された楕円の一端に、女大佐は長い指先を置く。
図上には、敵の猛将の名前が鉛筆で記されていた。
「はい、確かに。ここには、オーズ師団が布陣しています」
その名を耳にすれば、帝国軍の将校すら身構えるほどの豪傑である。
2年前、帝国大使館を襲い、自ら開戦の火蓋を切って落とすや、彼は麾下と共に、これまでの各戦役を戦い抜き、この区域に結集していた。
【5-18】梟
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894256758/episodes/16816700427624232397
それを、この紅髪の部下は、畑の
つまるところ、「ポイントD」とは、敵の勇将麾下、損害軽微な戦力の密集エリアであった。敵は疲労
すなわち、ここは兵力のだぶついた区域、濃淡でいえば「濃」……「特濃」のエリアにあたるはずだ。
それが、どうしたことか、情報収集・分析に秀でているはずのこのニワトリ頭は、そのような場所を衝けと主張するのだ。
帝国軍としては、密を避け、疎をうかがうのではなかったか。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
ヴァナヘイム一の猛将軍を案山子扱いとか、レイスはビッグマウスだな、と思われた方、
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【予 告】
次回、「ポイントD 下」お楽しみに。
「山の中腹にいる敵など、怖くもありませんな。足元から、小山の形が変わるほど砲弾を送り込んでやればいいだけです」
レイスは、二次元の図上で、三次元の弾道を示すように指を動かした。
「いや、それよりもですね……」
何か名案を思いついたようだ。ニワトリ頭の笑みには、底意地悪い色合いまで浮かびはじめている。
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