第8話 追憶
「暑いわね」
麗人は 制汗シートで首筋を拭う
「……本当に」
外を見上げれば 分厚い雲が漂っている
「寒いのも嫌だけれど、こう暑いのも考えものね」
「全くです」
内地の人からすれば 冷笑ものの雑談
それでも 僕らにとっては茹だるような暑さ
――死んじゃえ!!
こんな日だったと思う
無邪気な殺意
人が死ぬことを理解していないからこその戯れ
少女たちは 鬱憤を晴らす
死ぬんだと 僕は理解する
――大丈夫よ
靉靆たる景色の中 聴こえた声
微かな ありがとう
こんな日だったと思う
血の臭いに混じった優しい薫り
「どうかしたのかしら?」
メントールに混ざった薫りが 無い記憶を擽った
先輩と僕 ひとひら @hitohila
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