第2話 馨しい

「学校生活は、どう?」


 読書に耽っていた先輩が不意に顔を上げる

 

「まだ日が浅いので答えにくいですけれど、そう悪くはないと思います」


「そう」 


「なにか、拙い答えでしたか?」


「いいえ。ただ、『結衣香先輩のお陰で非常に充実した学校生活が送れています』という答えが無かったことに吃驚しただけよ」


「それは失礼しました」


「ねえ、折木くん」


「『私、気になります!』とか言われても、僕に謎は解けません。そして、枯木です」


「苦労してるわね」


「悲哀の眼で見ないでください。そして、どんなに名前が老けていても僕は間違いなく若い」


「そう……ね」


「どこを見て言っているのですか」


「私に言わせたいの?」


「……謝罪します」


 先輩は 立ち上がり窓を開けた


「寒いわね。冬に逆戻りしたみたい」


 先輩の髪が靡いて僕のところまで微風を運んでくる


「いえ。穏やかな春の香りが届いてますよ」


 僕は 優雅な香りを鼻から大きく吸い込んだ


「そう?」


 振り返った先輩は 僅かに微笑んだ

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