歪んだ鍵の鳥籠姫

佐藤 舞

第1話

「元気な女の子です!お母さん、よくがんばりましたね、もう大丈夫ですよ」


 母親はどうやらとても苦しそうで、やっとのことで目を開けた。


 澄み渡る秋空の下、小さな病院で一人の女の子が産まれた。


「生まれてきてくれたの…ありがとう」


 母親は力を振り絞り、産まれたての泣き喚く我が娘を抱き寄せた。


「しかしすごいですね、あんなにも体力が衰えていたのに…この子はお姉さまの生まれ変わりかもしれませんね」


「確かに、よく似ているな。お父さんだぞ、ほらこっちだ」


 産まれたてのその赤ん坊は、泣き止むときゃっきゃと声をあげ、今度は父親に抱き抱えられた。


「かわいいなぁ、ほんとうにそっくりだ…」

「ええ…よく産まれてきてくれたわ…」


 母親の体力的に、奇跡的に産まれたと言われたその赤ん坊は〝アリス〟と命名された。


「この子は奇跡の娘よ…」


 母親は嬉し涙を流し、アリスに微笑んだ。


「兄貴も喜ぶだろうな、妹ができて」


 父親も嬉しそうに、アリスに話し掛けた。


 アリスは相変わらずはしゃぎながら、両親の顔を交互に見つめ、その瞳は透き通るような美しい色をしていた。


 アリスが産まれたことは、瞬く間に周囲に広まった。

 実は母親はアリスを産むのは難しいと、医師から言われていた。

 なぜならば、アリスの前に二人の赤ん坊を流産しており、年齢から考えた体力的にとても困難だという見解だったのだ。


 アリスはそれを覆したことで、医師からも驚きと喜びの言葉を掛けられたのだった。


 しかし、この出来事を掻き消すかのような生活を送ることになるということを、誰も想定していなかった。

 未来は誰にもわからない、もちろん、産まれたばかりのアリスには未来どころか現在地さえもわからない。


 アリスはおとぎ話の「不思議の国のアリス」の主人公のように、好奇心旺盛で天真爛漫な少女へと成長していった。

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