第12話 鞭 VS 聖剣
手始めに俺は剣をめいっぱいに投げる。光の残影を出しながら、剣はひゅんひゅんひゅんと回転しながら二コラの首元へ。二コラはその剣の軌道を確認するかのように仰向きになりながらよける。
「言うの忘れてたけど。この剣、面白いわね!」
剣は二コラを通過した後、Uターンし、再び二コラの元へ。しかし、これも二コラの柔軟性あるポーズで避けられる。
「投げても戻ってくるなんて!」
「おかしいな、初見の相手は絶対避けられないと思ってたのに」
「だって崖の上で見てたもの」
「黙って見てたのかよ!」
錦は帰ってくる剣を走って前進しながら掴み、二コラに急接近。
「(能力の効果かしら、移動が速いわね)」
ニコラは冷静に構え、錦の次の行動に備える。
「うおぉ!」
大剣を真横に振り、二コラの腹を裂こうとする。しかし、二コラは後宙返りで避ける。その浮いている瞬間を狙い、錦はもう一度剣を投げる。今度は回転させず一直線に。
「よっと」
空中でありながらも体を捻らせ、剣は横腹をぎりぎりかすめる。スーツが破け、二コラが被っていたハットが地面に落ちる。剣は二コラの後方の地面に突き刺さる。
「びっくりするじゃない、それじゃあ、私の番!」
二コラは着地した低い姿勢から右足を地面につけ、左足を大きく前に出し、鞭を錦の方へ一直線に伸ばす。
「うぉっ!」
思った以上に伸びる鞭。首に巻かれそうになるが、反射神経でかわす。
「伸びすぎ!」
「そりゃ、私の気分次第だからねこの鞭は!」
ビシビシと床で音を出しながら、錦を掴もうと鞭がしなる。何とか剣を地面から解放したいが、なかなか動かない。
「くそっ」
油断した瞬間、鞭が足首に巻き付く。
「はい、終了」
二コラはやる気が失せたかのように声のトーンを落とし、鞭を反対側へ投げるかのように振り、錦は宙を舞い地面にドコッと叩きつけられる。
「がはっ!」
背中全体に痛み。
まだだ、まだ諦めるか!運のいいことに、叩きつけられた場所は剣に手が届きそうな位置だった。俺は必死に手を伸ばす。
「もう、負けたのよあんた。諦めなよ」
ニコラの持つ鞭が青白い色から、赤黒い色に変色し始めた。
「なっなんだ?」
急に得体のしれない不安、恐怖が胸の中を支配し始める。まるで、死後や宇宙のことを考えてよる眠れなくなるような・・・・・・、いや、それだけでは終わらず、なぜ自分が生きているのか、生まれた意味はあるのかについての答えが見つからず、社会から切り離されたような感覚に。
「はっ、はっ」
息が吸えない!苦しい!寒い!助けて! 鞭が首を絞めているというわけではないのに、異常な反応が体に起こり始めている!
「スピリチュアルを鍛えていない人にはよく効くんだな~これが。どう?あんたの負の感情を倍増させてるの。苦しいでしょう?」
確かに彼女の言う通り、不安、恐怖を含める負の感情ばかりが意識され、それを払いのけることもできない。鼓動が早くなり呼吸数も増えている。
彼女は落ちたハットを拾って被り、俺に近づいた。
「わたしの勝ちってことで。あんたは残念だけどウル様のところへ一旦連れていくわ。別の処刑法も考えないといけないしね」
不安、恐怖に震えている俺を彼女は担ぎ、この化け物が住んでいた場所を後にした。正直なところ、運ばれている間、震え続け、周りの風景の記憶などもちろん残っていない。
プルプルプル
「はーい 私メリーさん」
「お久しぶり。モグからの脅しがあったから怖くなって電話しました」
「カシマ、なんで電話に出れなかったのよ」
「悪い。電波の届かないところに2時間弱閉じ込められてたんだ。」
「なんと、私の電波が遮断される場所がまだあったのね・・・・・・改善の余地があるわ。で?今あんたはどこにいるのよ。出来れば直接文句を垂れたいのだけど」
「今? 牢屋」
カシマは薄暗い牢屋で一人。そこで腐り果てたガイコツを含めれば二人。
硬いレンガの作りで、厚い鉄格子で囲まれている。
背中にはいつものギターケース。
「あら、カシマ。ついに捕まったのね。お気の毒。罰金を払うついでに今までの通信量も払ってくれると嬉しいのだけど」
ウキウキしながらメリーは話す。
「ははは・・・・・・無事、こっちの仕事が終われば近いうちに払ってあげるよ〜」
「仕事ね・・・・・・危険なことなの?なんなら今のうちにいい保険をかけてあげるわよ」
「うーん、僕じゃなくて、錦くんの方が危険かな〜」
「なんで錦くんが?」
「ごめんよ、始まったようだ。また説明するよ」
「はぁ、よくわからないけど、面倒なことになっているのは理解したわ」
「それじゃ」
ピッ と通話を切る。
牢屋の壁側、カシマの後ろに一人の男の影。
「さて、俺は今からどうすれば良いんだ?」
「時間ぴったりだねニワタリくん、錦くんの剣をまず回収しに行くよ」
「あいよ」
ニワタリは壁に向かって、右手に持ったリボルバーのトリガーを引く。弾は出なかったが空間がバリバリと裂ける音がする。
「いつもすまないね」
二人はそのワープホールに足を踏み入れた。
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