20XX年 第十四話 プレゼンバトル

 AIロボットもバイテクウサギも床に倒れていた。バイテクウサギが、抑え込んでいるAIロボットごと、床の上を物凄いスピードで転がったからだ。

 カウントを数えるデジタル的な音声は止まった。

 ――AIを守る頭部の構造も完璧だな。素材はミラクルポリマーか?

 AIロボットは凄まじい衝撃を受けているのに、的確な判断、正確で速い反応、素早い身のこなしは変わらないままだ。

 バイテクウサギは長い耳でAIロボットを捉えながら、賞賛するように和也をちらりと見た。

 ソニックブーム。

 よそ見を見逃さなかったAIロボットと、それに気付いたバイテクウサギが、同時に飛び跳ねていた。空中でぶつかる。

 ソニックブーム。

 ソニックブーム。

 ソニックブーム。

 戦いは激しさを増していった。

 ソニックブーム。

 AIロボットは決してバイテクウサギに休む間を与えない。

 ――AIの戦略だ。俺様は生物だ。体力に限界がある。

 狂ったように攻め続けてくるAIロボットの動きは、時間が経っても全く変わらない。一定のままだ。

 とうとう、バイテクウサギは防御するばかりになった。

 ――必ず弱点はあるはずだ。

 バイテクウサギはできるだけ動きを少なくし、体力を温存しながら、冷静に弱点を探っていった。そんな目が、継ぎ目を捉えた。

 ――このスピードの中で狙うには、表面積が小さすぎる。だが、やるしかない。

 バイテクウサギはその攻撃方法を練った。

 ――これならいけるかもしれない。だが……。

 防御姿勢のバイテクウサギは、自らの頭脳に浮かんだ案に、苦悶の表情を浮かべた。

 ――やりたくはないが、それしかないな。

 溜息を吐くかのように、バイテクウサギは鼻から空気を吐いた。

 ――AIの学習を考えると、一回で仕留めなければならない。

 意を決したバイテクウサギは、床を蹴り上げた。防御から一転、攻撃を始めた。だが、なかなかその機会を得ることができない。

 バイテクウサギは疲れから、思わず速度を落としてしまった。それを見逃さなかったAIロボットが、変わらない速度と動きで、バイテクウサギの横腹を蹴り上げた。バイテクウサギの体が空中に浮かんだところで、AIロボットはバイテクウサギの背を蹴った。バイテクウサギは床に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。

 場内にカウントを数えるデジタル的な音声が流れる。

 「一、二、三……」

 ピクリともしないバイテクウサギの後足の先で、AIロボットが突っ立ったままになった。

 十カウントで、AIロボットの勝利になる。

 「七、八、九」

 ソニックブーム。

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