第四話◇戦争と平和をバランスよく
ハムスター人類が順調に増えていきます。
やたらと大きな危険な生物は、氷河期で死んでますので、天敵となるのは肉食の獣くらいでしょう。
武器に罠を発達させたハムスター人類は、ちょっと大きいくらいの肉食の獣は逆に狩ったりするので、全滅にはなりません。
ただ、増えたら増えたでナワバリ争いというか戦争が起きるようになります。
ハムスター人類が戦っていますね。しかし、戦っているというより逃げるのを追いかけているような。
ひとりの頭ひとつ背の高いハムスター人類男が、剣を振り回して戦っています。
どうやら仲間を逃がすために
森の中、細い獣道、たったひとりで通せんぼして百を越える敵を足止めしようとしています。
「我が民をやらせはせんぞ! この卑怯ものめらが!!」
遠くに逃げる人達が時おり振り向きます。王よ、王さまよ、と口にしています。
足を止めずに走りながら、泣きながら。
戦う男は何人もその剣で切り殺していきます。剣は血で赤く、その身も返り血で赤く染まっています。
ですが多勢に無勢、やがて力尽きたか、避け損なったそのハムスター人類の男の腹に槍が刺さります。
叫びをあげる男の身体に、次から次へと槍が刺さります。
「おのれぇぇぇぇぇ! よくも謀りおったなぁっ! この恨み、子々孫々まで伝えて必ず晴らしてくれようぞ!!」
呪いの言葉を敵に放ち、王と呼ばれた男は地に伏して動かなくなりました。
王の敵の集団は王の言葉に震えて立ちすくんでいます。
ふむ。
「現場の分体、聞こえますか?」
「はい、ただいま逃走中の群れを確認しました」
「では彼らを全滅しないように上手く逃がして下さい」
「あのー、目立たないようにするのは難しいかと」
「姿を隠して避難誘導を手伝うというところで、催眠とかお告げとかで誤魔化せるように」
「ちょっと強引な気もしますが、王の幽霊のフリとか、森の精霊のフリとかでやってみます」
子々孫々まで恨みを伝えるというのであればお手伝いしましょうか。
戦いの物語を伝えた先に、歴史が、戦記ができますからね。恨み骨髄の復讐譚も良いですね。
戦いに負けた方は次は負けないように工夫して、勝つための方策を練ります。
勝った方は復讐を怖れて次の戦いに備えます。
技術が発展して発明が産まれます。武器が発達し、他の生物を乗り物として利用するようになります。
国を名乗る群れが大きくなります。
やはり戦争はたまに起きると良い刺激になりますね。
技術が上がり過ぎて殺傷力が跳ね上がる武器が現れなければ。
宗教を伝えるために文字が発達し、一部に書物が出回り始めました。未だ印刷などは遠いので手書きの巻物ですが。
慌てず地上の様子を見守ることにしましょう。
保存可能な穀物の農耕が発達して、食料に余裕ができると急激に変化します。
支配者階級と被支配者階級の構造ができると政治が発達しますね。
階級社会ができなければ政治は発達しない。人が身分の上下を作ることで国と政治は発展していきます。
考えることを仕事にするものと、それを支える仕事をするもの。この役割分担が上手くいくと国は栄えていきますね。
そのために奴隷制度ができていきます。
動物の家畜化も順調のようです。
そして繁栄したところを略奪するものが現れます。
征服した国の民を奴隷にして、更に発展していく国があります。
「白い毛皮のハムスター人類が負けましたね」
「橙色の毛皮のハムスター人類が征服者として君臨するようですね」
奴隷に仕事をさせることで豊かになり、さらに文化が発展していきます。
高度な政治はそれを支える奴隷がいなければ成り立ちません。
過去の文明の中では、生活と社会を守るために、自ら奴隷となるものもいましたね。
支配者階級の娯楽を充実させるために、絵画、彫刻、音楽が発展していきます。
「やはり裕福な支配者階級が支援してこそ、芸術は発展していきますね」
「娯楽に割くだけのリソースが無ければ無理なことでしょうね」
演劇が娯楽として成り立つようになりました。いくつか映像記録に納めて保管します。
武器や鎧を作るために発達した冶金技術が、新しい金属楽器を開発して音楽の幅が広がっていきます。
こうしていろいろと作ったり、作ったものを奪いあうことで文明は発展していきます。
殺すための工夫と殺されないための工夫。
奪うための知恵と奪われないための知恵。
壊すための努力と作るための努力。
競いあうことで更に更にと成長します。
しかし、印刷技術が発達するのはまだまだ先のようです。1度世界大戦でも起きて大きく技術革新でもしないとダメでしょうか。
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