父へ


私は父の元に生まれてきて、とても幸せだと思うのだ。


だからいつもあの横断歩道で、父の背中を探す。

もしかしたら、通りの向こうまで渡りきった父が、そこにいるかもしれないから。


そうしたら、私はもう一度、振り返った父に手を振るのだ。


行って来るねと手を振るのだ。



そして誕生日には電話をして、おめでとうと言うのだ。





『お父さん、誕生日おめでとう。


それから

ほんまにありがとう。』



だから



きっと私の旅の果てには、笑顔の父が待っていてくれるに違いない。


だから、その時まで、聞き取れなかった言葉のことは忘れていようと思う。


そして私も伝え忘れた言葉を、父が遺してくれた沢山の思い出と一緒に、その時まで取っておこう。











『大好きやで』

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父へ 麒麟屋絢丸 @ikumalkirinya

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