第9話 文化委員の行方
秋も深まる今日この頃。
授業も終わり、放課後のHRで委員を決めることになった。
前期は委員になる事はなかったが、後期は何かする事になるかもしれない。
多数ある委員の中で色々と決まっていく中、文化委員と体育委員だけがなかなか決まらなかった。
そりゃそうだ。そろそろ文化祭と体育祭があって忙しいのはわかっているのに、わざわざそこに飛び込む人はいない。
そんな中、一人手をあげるものがいた。
「先生、文化委員やってみたいです」
手をあげたのはあさひだった。
こうして一人決定という事だが、委員は二人でなければならない。
一人はあさひになり、となりのヒロキがソワソワしだした。
「僕も文化委員になろうかな、そうしたらあさひちゃんと一緒にいられるしなぁ」
それは困った。二人でいられては困る。ヒロキが他の女の子と一緒にいるなんて嫌だ。
そう思うと同時にヒロキが手をあげた。
「先生、僕やりたいです」
私も追うように手をあげた。
「私も立候補します!」
委員になれるのは二人までだが三人になってしまった。
あさひとヒロキ、そして私は教壇のとなりに集まり、三角形になるようにお互い向き合った。
「あさひは文化委員になりたかったの?」
「私はまだこのクラスの事を知らないので、文化委員をやれば皆さんと仲良くなれるかもしれない。ですのでやってみようと思いました」
あさひはまじめだ。それにひきかえ、ただヒロキをあさひと一緒にいさせたくないから立候補してしまってほんとゴメン。
「ヒロキは?」
「僕はまだ転校して間もないあさひちゃんのサポートがしたいんだ。この気持ちは嘘じゃないよ」
ほんとはただ一緒にいたいだけのくせに。
あさひとヒロキがもし親密な関係になったら私は泣いちゃう。だから文化委員は譲れない。
少し緊張した面持ちのあさひ、キラキラした眼差しでいるヒロキ、ジェラシーで燃えたぎっている私。
果たして文化委員になるのは一体誰になるだろう。
人数オーバーなので先生はジャンケンで決めるよう言ってきた。私はジャンケンには弱いのであまり自信がなかった。
三人、目の前に手を出す。
「じゃんけんほい」
……あいこだった。
「あいこでしょ!」
二人がグーで、一人がパーだ。
パーはあさひだった。一人はあさひに決定だ。
なんてこった、という事はここでヒロキに勝たせるわけにはいかない。
いつもじゃんけんに負けて三月にハンバーガーおごらされてますが、神様今日だけは勝たせて。
「ヒロキ、いくよ」
「いいよ、じゃんけん」
私は目をつむりながら手を出した。勝敗は一体どうなった。
ヒロキがパーに対し、私はチョキを出した。私の勝ちだった。
「えー、というわけで文化委員はこの二人に決定した。みんな拍手してやって」
クラスのみんなから拍手を浴び、私とあさひは文化委員になった。
あさひはちょっと恥ずかしそうにしていた。
こうしてなんとかあさひとヒロキの二人きりを阻止した。危なかった。しかし。
「でも女子二人ってのもなかなか大変かもしれんしな。ヒロキ、お前も助手って事で手伝ってやれ」
こうして文化委員は私とあさひ、そして助手のヒロキ三人でやる事になった。
あれ?私じゃんけん勝ったよな?
いったい何のためにじゃんけんしたんだか。
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