第8話 美しい転入生2
ヒロキが泉さんに友達になりたい宣言をして、クラスはざわついた。
無事泉さんがOKし安心したのか、ヒロキも友達のところにご飯を食べに行き一息ついた。
「泉さん、本当に良かったの?」
私は泉さんに聞いてみた。
「私は、転校が多いから友達を作るのがなかなか難しいのです。だからありがたいです」
「男子でも?」
「色んな人と仲良くなりたいと思ってます、男子でも女子でも。ヒロキさんでしたか、あぁ言ってくれて嬉しいです」
うーん泉さんはまんざらでもないようだ。
まさかヒロキが気になった女子に少しでも受け入れてもらえる日が来るとは。
「静流さんって呼ばれてましたね、私の事も泉ではなくあさひって呼んで下さい」
「いいの?じゃああさひって呼ばせてもらう。私にさんってつけなくていいよ」
「これはクセみたいなものなので、そう呼ばせて下さい」
「あーちゃんの制服って有名な杉の木高校やんな?お嬢様高校って呼ばれてるとこの」
「そう言われているらしいですが、私はそんな言われるような人ではないですよ」
あさひはうちの学校と違う可愛い制服がとても似合い、輝いていた。
ヒロキがコロッと恋に落ちても仕方がない。私も男子だったらそうなっていたに違いない。
「私の学校では男子はいなかったので、共学ってなんだか楽しそうですね」
「せやで〜共学やったらいつ彼氏ができるかわからん楽しみもあるしな」
また三月はそういう話をする。
「あーちゃんは告白とかされた事ある?」
「告白ですか?……言うのはちょっと恥ずかしいですがあります……何回か」
「どういうとこで?」
「学校の帰りに、駅のホームなどで違う学校の方に」
「付き合ったりはせんかったん?」
「……しませんでした。よく知らない方達なので」
「もったいないなぁ、あーちゃんならいっぱい彼氏できそうやのに」
あさひは見た目は大人びているが話してみると意外と謙虚、というか照れ屋な感じだった。
「私は……私がちゃんと好きになった人と付き合いたい、そう思ってるだけです」
照れながらもそう言った。私も同じような気持ちなので同感だ。
「はいはい三月、あんまり変な事は聞かないの。あさひもそんな恥ずかしいんだったら言わなくていいから」
「ええやんちょっとくらい、静流だって恋してるねんからそういうの聞きたいやろ?」
「……静流さんは、好きな人いるのですか?」
なぜか私にまで話が飛び火してきた。
「好きな人、というか、気になってるっていうかさ。まぁそんな風な人はいるよ」
私は恥ずかしく、もどかしい言い方をした。
「うそつけ、めっちゃ好きなくせに」
「もう三月は余計な事言うな!」
私は三月の頭を小突いた。
「そうですか。どんな方なのか気になりますね……」
「まぁ見とったらそのうちわかるわ、こっちもついニヤニヤしてまうで」
「もうその話はいいの、あさひは放課後は時間あるの?」
「放課後ですか?大丈夫ですが」
「良かったら校内案内するよ」
「そうですか、それではぜひお願いしたいです」
「ヒロキ君も一緒やな」
「だからややこしい事を言うな。もうお昼終わりだよ、さぁ席に戻った戻った」
「……ヒロキさん、か」
あさひがポソっと言った。
「何か言った?」
「いえ、なんでもありません。お昼ご飯一緒に食べてもらい、ありがとうございました」
こうして二人は席に戻り解散した。なぜいつの間に私の話になってるんだ、変な汗が出る。
席に戻ったあさひはこっちをチラッとみてきた。
私は小さく手を振ると、気恥ずかしそうに前を向いた。
ヒロキもとなりの席に戻ってきて、なにやらニコニコしている。
「どうしたの?」
「あさひちゃんに席貸してくれてありがとうって言われた」
ヒロキは相変わらず私の気持ちに気づく事もなく過ごしている。
「バカ」
「? なんか言った?」
「なんでもない」
美しい転入生がやってきた、秋の気配と他に何かを感じさせる日であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます