第4話 ガールズトーク

「なぁなぁ、静流ってヒロキ君と付き合ってんの?」


 私の家に遊びに来ていた三月(みつき)にそう言われた。


「この前花火大会あったやん? あん時ウチ友達と行っててな、静流とヒロキ君が一緒にいるの見たんや」


…見られていたのか、地元だし仕方ない。しかしよくあの人の多い中私とわかったものだ。


「付き合ってないよ、一緒に花火見に行っただけだよ」


「それデートやん! 完全に付き合ってるやつやんけ!」


 三月のテンションが上がってきた。こうなっては大変だ。


 三月は中学からの仲で昔から恋バナに目がなく、ましてや恋をした事がなかった私が男子といるというのだ、そりゃ三月も食いついてくるわけである。


「だから付き合ってないよ、私も暇だったしあっちも暇だったってだけ」


 まぁ、嘘ではない。


「ほんまに?そんな暇潰しでわざわざ浴衣着ていくような女じゃなかったはずやあんたは」


 三月は変にするどい、そうだよ気に入られたくて浴衣を着たんだよ。


「それに静流があんなに嬉しそうな顔してたの見たことなかった、ちょっとは気あるんちゃう?」


「あいつとは入学してから席がたまたま隣で、たまたま馬鹿な話を聞いてる仲だ」


「そんな事言わず素直になりぃや、静流わかってないと思うけどアンタ顔赤いで?」


 このクーラーが効いてる部屋で顔が熱で帯びている事に言われて気づいた。そんな突っ込んだ話をされた事がなかったしね。


「…笑わない?」


「おもろい話やったら笑うけど真剣な話ならウチは笑いません」


「本当に?」


「本当にや」


「……その……三月だから言うけど…他の人に言っちゃダメだよ、私は気になる……いやあの、まぁ好きかな」


「どこが好きなん?」


「どこって……いつもあいつフラれて泣いてるでしょ、そんな泣き顔を見てるとなんか可愛く見えてきたっていうか、あと純粋なんだぁって」



「静流もそんな色っぽい顔するようになったやな、すっかり恋する乙女や」



「恋する乙女って、まぁ好きだけどさ」



「静流もうかうかしてられへんで、ヒロキ君は皆にいじられてるけど結構愛されキャラやからな。いつかは告白も成功するんちゃうかな、実は顔結構可愛いし」


「そうなの可愛いでしょ。そこが私ドキドキしてる、いつか成功してしまうんじゃないかってさ。でも最近はまだ一目惚れ癖が出てないからさ、ちょっと安心してるんだ」


「あんたも泣き顔が可愛いとか言って見た目で決めとるのがヒロキ君と一緒やん、あんたら実はお似合いなんちゃうか」


「か、顔だけで決めてないよ、ちゃんとあいつのピュアな感じなとこが好きなの」


「う〜んあの猫のようにクールだった静流がこんな事言うなんてな、フフフ」

 

「ちょっと、笑わないでよ、私は真剣なんだから」


「笑ったのは別にバカにしたりしてるわけちゃうで? 静流が女として成長しとるのが嬉しくて笑ったんや」


「冗談じゃなくてもそんな風に言われるのは恥ずかしいな」


「私は静流が好きなんや、私は静流を親友と思ってる。だからなんかあったら力になりたいから今日は聞いたんや、決していじろうと思って聞いたわけちゃうからな」


「三月…」


「いやホンマはちょっといじりたかったけどな」


「おい!」


「あぁちゃんとツッコんでくれる友達がおって良かったわ〜」


「何それ」


「まだまだヒロキ君の事話したかったら聞くで、つうかウチが聞きたい! だから今日は静流の家泊まるわ!」


「私は泊めるなんて一言も言ってないけど、親はいいって言うだろうけど」


「じゃあ決まりや、コンビニ行ってお菓子とジュース買いにいこ」


「騒ぎたいだけでしょアンタは、はいはい」


 

 こんな風に誰かに自分の想いを打ち明けた事がなかったので恥ずかしいようなありがたいような。


 少し思うのは花火大会に行ったのが私とヒロキだけの秘密だと思っていたのにばれてしまったのは残念だ。



 それでも気の知れた三月に素直な想いが言えただけ楽になった気がした。


 夜中まで二人で恋について話し、意気込んでた方の三月が先に寝てしまった。


 たまにはこんな過ごし方をするのも悪くない。


 今日は三月とずっと一緒にいたからヒロキには連絡しなかった。ヒロキからも連絡はなかった。何をしていたんだろう。


 夏休みももうすぐ終わり二学期が始まる。早く会いたい。


 夏が静かに過ぎていく。

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