第二の手稿⑤
コンスタンス(略)様は、ふと思い出された調子で、傍らの小卓に置かれた、あの――言うなれば忌まわしい贈り物である
軽いノックの直後、こちらの返事も待たずにドアが開き、メアリとドクター・ロンフルマンが入ってきました。先生は無言でコンスタンティン(略)様に歩み寄り、脈をご覧になると、小さく
「お支度は、よろしいようですな。馬車が待っております。すぐ参りましょう」
どうやら先生がコンスタンス様を匿ってくださるらしく、わたくしは微かな安堵を覚えましたが、それだけで問題の片が付くわけではございません。超然たる面持ちで、最早何ものにも特別な関心を払わなくなったご様子のコンスタンス様を除いて、三者は目と目を見交わしました。先生はウムと頷かれ、
「ここの鍵は」
「それだ」
コンスタンス様が指を差されました。先ほどの小卓に鍵束が投げ出されておりました。
「結構。日が暮れたら人を遣わしますから、このままに」
「ええ、あの……」
「もちろん、メアリはコンスタンス様と一緒に、取りあえず拙宅へ」
「承知しました」
メアリは気の利く
「夜、こちらで仕事を済ませた者たちが戻る際、運び出させればよかろう」
「ありがとうございます。用意しておきます。メアリ、必要な物は?」
すると、彼女はわたくしにそっと耳打ちしました。
「わかりました。よく先生のお言いつけを聞いて、しっかりね」
「はい」
「家政婦長どのは、今宵の仕儀の後、どうなさるか、ご自身で判断されるといい」
「かしこまりました」
先生に促されたコンスタンス様とメアリに続いて、わたくしも部屋を出、鍵を掛けました。すると、コンスタンス様は例の指環を差し出され、
「今まで世話になった。アン=マリー。貰ってくれ」
「そんな……。もったいのうございます」
いえ、正直に申しますと不気味さが
不安に打ち震えるアン=マリー・クール
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