第二の手稿①


 煩悶のうちに、お客様をお迎えすることになりました。ベッドフォード公の縁戚に当たられるワートロス様のご子息エドガー様です。コンスタンス様、コンスタンティン様にとっては幼馴染みですが、久方ぶりのご対面と相成りました。

 エドガー様は十七におなりとのことでしたが、遙かに大人びて見えました。既に一人前の男性、立派な騎士の風格を備えておいでです。ただ、わたくしには流行りの装飾品という股袋コッドピースなる代物が、どうにも下品に見えてせないのでした。丈の短いダブレットの下にお穿きになるピッチリしたショースの前面に、共布にレースをあしらった飾り物が丸く浮き上がっているのです。エドガー様は両手を腰に当てて胸を張り、自慢げに、かの部分を誇示するポーズをお取りになりました。すると、コンスタンティン(略)様は恥じらいの色を浮かべて目を逸らされましたが、コンスタンス(略)様は薄笑いと共に腕を組み、挑戦的とも取れる態度を示されました。しかし、エドガー様は鷹揚に受け流して、

「今日お邪魔したのは他でもない、二人に誕生日プレゼントを渡すためだったのだ。少し早いがね。当日は会えそうもないから、前倒しで」

 お付きの方が携えた小さなケースをお取りになって、

「美しい姫と勇敢な未来の男爵、それぞれに相応しい逸品を用意したつもりだが……」

 コンスタンティン(略)様が小箱を開けると、薔薇をかたどった大きな赤い宝石の指環がトロリとした光を悩ましく放ちました。コンスタンティン(略)様は、ああ、と小さく感嘆の吐息を漏らし、潤んだ瞳でエドガー様を見上げ、次いで膝を折って丁寧なお礼のポーズを取られました。

「我らが血と情熱と、勝利の約束のしるし。だが、これは序の口。いつか、そなたがもっと豪奢な装いの似合う一人前のレディとなられた暁には、遙かに素晴らしい宝玉を授けよう」

「ありがたき幸せ」

 コンスタンティン(略)様は小声でお返事をされました。緊張と感激で震えていらっしゃるのだと、エドガー様は受け取られたのでしょう。慈愛に満ちた視線を向けながら頷かれました。しかし、コンスタンス(略)様は、おとうとぎみが日に日に低くなっていくお声を誤魔化そうとするのを察しておられ、軽侮の表情を浮かべられたのです。そうしたことにはお気づきにならないのか、エドガー様は優しい眼差しのまま、

「さあ、お手を」

「はい」

 コンスタンティン(略)様が差し出した左手、その薬指に、エドガー様は深紅の薔薇のリングを飾ろうとされました。が、第二関節が太くてスムーズに環が通らないのです。コンスタンティン(略)様は眉根に皺を寄せて痛みを堪えていらっしゃるご風情。コンスタンス(略)様は少し離れたまま、そんなご様子を眺めて鼻でお笑いになるのでした。

 ひとまず体裁は整いましたが、外すときはどうすればよいのかと、わたくしは思いました。もちろん、コンスタンティン(略)様ご自身が一番心配されているはずでした。

「申し訳ない、少々サイズが合わなかったようだ。後で小指にでも移し替えられるがいい。もっとも、これは序の口。いずれ、より質のよいものを改めて贈ろう」

「ありがとうございます。是非……」

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