Vol.9 大人になるということ
これまで理由なくときめいていたものに
1ミリも心を動かされなくなるのなら
大人になんてならなくていい
無垢な気持ちで信じ切っていた周囲の全てを
何をするにも一旦疑ってしまうようになると知っていたら
大人になんてなりたくなかった
社会という戦場に出て、自ら選んだ道を進み、
自分の力で"居ていい場所"を死守することは
大人になると味わえるスリル
どんな形であれ、生きている以上は生活を回し、
何だかんだ今日も生き終えて、ふと
あぁ 私って人生を送っているんだなと自分を客観視する瞬間は、
大人になって得た新しい視点
大人って なんだろう
子どもを見ると、物理的に自分はそれに当たるのだろうし、
定義上だってそう
けれども、周囲が大人だらけの場所に放り出されると、
自分はちっとも大人ではないと思う
子どもだった頃に思い描いていたような、
そうなると信じて疑わなかった将来の姿には
泣きたくなるくらいに程遠い
中身は、こんなにも成長しないなんて
私たちが子どもだったとき
既に大人だった人たちは、
私たちを見て、同じことを思っただろうか
子どもではもちろんないけれど、大人にもなりきれていない
こんな虚しく寂しい感情を抱くことを
なぜ先に大人になった人たちは
教えてくれなかったのだろう
今の自分に、絶望しているわけではない
ただ、
自分の現状と向き合うために使うエネルギー、
社会を生き抜いていくエネルギー、
大人として生きてゆくためには、なんて沢山の、
途方もない量のエネルギーを消費するのかと、
答えの無い問いに苦しくなっている
そして、そうしたことを学んだ大人の私が
どんなに声を大にして伝えようとも、
何ものにも気兼ねせず、いつだって"今"を
全力で生きている子どもには、
すこしも届かないのだろう
みんな、大人になってから身をもって知るのだ
子どものままでは知り得なかった、
気づくことも、関わろうともしなかった、多くのことに
そんなことを考えるとき、
人はきっと、大人になっている
ふとした瞬間に 美雨 @ennsui
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