第12話
途中小規模な戦闘が数回あったが、4人は領主館前にたどり着く。領主館前ではジェフが何か石のようなものをセットしていた。ジェフが4人に気づき声を掛けてくる。
「おお!無事だったか!さ、早く中に入って!結界魔術を起動させるよ!」
そうして4人が敷地内に入ると、結界魔術が起動した。これは結界石と呼ばれる石を並べることで対魔結果を展開すると言うものだ。赤いガラスのようなものが敷地内を覆った。
「ふぅ…これで気休め程度にはなるでしょう!」
ジェフがそういうと4人の方を向く。
「先ほど、ウラガン様とホーキンスさんもこっちに来たよ。今建物の中は負傷者で一杯だ…こんなことになるなんて…」
「仕方ないですよ…これは仕組まれた、そしていつかは決着しなければならないことだったのかもしれません。」
ガルドがそういうと、ジェフが不思議だなという顔をする。
「ガルド君…君は一体…」
「ウラガン様とおやっさんの所へ案内してください…俺が聞いた事を話します。」
ウラガンとホーキンスは敷地内に出来た仮設本部に居た。そこで坑道内の地図を確認している。
ジェフと4人が入って来たのに気づくとホーキンスが嬉しそうな声を上げる。
「おお!ちゃんと生きてるな!よしよし上出来だ!」
「うむ、迎撃ご苦労であった。とりあえずの脅威は去った…という事か…しかし、事態は一刻を争う…という事だな、ガルド君。」
「はい、その通りです。それでは皆さんに俺が見たことを説明します。」
ガルドはあの夢の事を静かに語り始めた。
ガルドが夢に居る時の事。ガルドはアヤに似たなにかと話を続けていた。
”わかりました…まず、私の名前はエリア。この鉱山と周辺を統べる女神です”
ガルドは驚いた。ここ数日話題に出ていた神が本当に居たとは…
”ここでは貴方のイメージが優先されます。どうやらこの女性の方に強く惹かれているのですね”
そう言われると、ガルドは顔を赤くする。
「いやいや、そんなこと良いからさ!で?その神様がなんだって俺の夢に?」
”あなたは以前、この女性に誘われるような夢を見ませんでしたか?”
ああ、そういえば…とガルドは思った。
”あなた以外の鉱山付近で休まれた方はみんなそういった夢を見ており、受け入れています。ですが、貴方だけは拒んだ…というより退けた…と言った方が宜しいでしょうか。その際に貴方とサイズの間の道だけが残ったのでしょう。その結果サイズに取り込まれた私とも交信が出来るようです”
「確かに…そんな夢を見たな…いや待て!それでその夢見て受け入れた連中はどうなるんだ!?」
”はい、今はただの操り人形として動く程度です。まだ身体的損害はありません。”
いや、それでも結構まずいよな?とガルドは思ったが、口を紡ぐ。
”しかし、進行が進めばやがてサイズに自らの魂と肉体を差し出し、あの邪悪なる存在が復活します。”
「結構ヤバい状況ってのは分かった。で、そのサイズってのは何なんだ?」
”サイズは石と糸の主。ゴーレムやクモを支配しています。”
ガルドはクモに関しては鉱山で過去何度か戦ったことを思い出した。
「そのサイズってやつの目的はなんなんだ?」
”サイズの目的、それは恐らく人間への復讐です。この地に封印された事への復讐…もう100年ほど前の話です。私はこの鉱山を守護しており、ある日人間から「ここを採掘させてほしい」という願いが届きました。私はこの山を人間たちに開放し、人間たちはこの鉱山でとれた鉱石で生活を豊かにしていきました。ですが、70年前異変が起こりました…”
「大陸内戦…か…」
”はい…私の鉱山から発掘した金属で人を殺すなど…私は許せませんでした。そしてこの鉱山で鉱石が取れないようにしました。しかし…それに腹を立てた人間たちの王は、サイズを放ち私を追放しました…そしてサイズによって労働者を操り、死ぬまで採掘要因として使用したのです”
むごい話だな…とガルドは感じた。ソレイス公国最初の王ソレイス一世と言えば他国に対して非道ともいえる行いをした人物で知られている。
”しかし、戦争が終わるとサイズはこの鉱山の人間たちを操り、国を乗っ取ろうとしました。そこで立ち上がったのがオブライエン…オブライエンは私と交信し、信徒となる契約を交わしました。しかし、サイズは人間の魂を集めることで力をつけていました。オブライエンは私の力と魔剣を使い、サイズ倒すことは出来ませんでしたが、南部鉱山最奥部へと封印しました。”
「オブライエン…」
ガルドは霊園にひときわ大きい墓があり、そこにこの町の英雄が眠っていることを人づてに聞いたことを思い出した。
”そこから暫くは平和な日々でした。彼の意思を継いだ者たちは南部鉱山最奥部に私の祠を作ってくれました。以前の領主も私を信仰していました。”
それが恐らく2週間前に亡くなった領主、ゲイツ様だろうとガルドは思った。
”彼はもまた、先代よりの意思を受け継ぎ、私の信徒として尽くしてくれました。
しかし、そこで問題が起きました。人間社会の移り変わりにより、私への信仰が薄れ、封印が弱まり始めたのです。結果、南部坑道ではサイズから生まれた魔物が少しずつ増えていきました。それはサイズの復活する可能性を意味します。”
「じゃあ、3年前に南部坑道を封鎖したのって…」
”はい、私が彼に指示をしました。この南部坑道に完全なる封印魔術を施せばサイズを封印することが出来ます。私も新たな祠を別の場所に用意してもらえる計画でした。しかし、封印されていたはずのサイズはゴーレムに穴を掘らせ、他の場所とつなげることで封印を破りました。”
「じゃあ…最初にゴーレムが大穴を開けたのって…」
”封印を解くためです。一か所でも封印が弱まればそれでよかったのでしょう。サイズは封印を破り、私を吸収しました。そこからの事は断片的にしか覚えていませんが、サイズは今、あなたの友人を引き連れて最奥部に居ます。!
「マックスは生きてるのか!?どうすれば助けられる!」
”あなたのご友人は今、サイズの警護の為に操られています。他の兵士もそうです。ですが、これらはすべてサイズを倒すことで術が解けます。そしてこの武器を使ってサイズを倒してください”
するとエリアは一本のダガーを差し出す。それは非常に綺麗な作りであり、アヤが持っていたアカネアゲハに勝るとも劣らない美しさであった。
”これを貴方に…これであればサイズのコアを破壊出来ます。”
ガルドは一連の事を説明した後、エリアから受け取ったダガーを見せた。
「こいつでサイズのコアを破壊すれば全部終わる…そういう事です。」
その話を聞いて誰もが言葉を失った。直後ジェフが嘆き始めた。
そして話を聞きながら、終止考えるそぶりを見せていたワグナーが立ち上がった。
「ガルドさんの話から推測するに、エリア神が抑えられる時間はほんのわずかしかない。今すぐにでも向かうべきでしょう。」
それを聞いてホーキンスが片目をつぶる。
「ガルドが言っていた夢なら…俺も見たような…でも俺は何ともないぞ?」
「私も特にそんな夢は見ていないな…」
アリアもそう答える。ガルドもやや不思議には思った。
「もしかすると個人差や耐性の問題があるのかもしれません。例えば、ガルドさんは自力で跳ねのけたという事ですし、お二人も無意識で跳ねのけたのかもしれませんよ?」
ワグナーがそう仮説を立てる。ガルドはこの二人ならあり得る…と思った。
「しかし、ワグナー神父が言う通りだ。時間が無い。南部鉱山へ行くメンバーを決めなければな。」
ウラガンがそういうと、ホーキンスも相槌を打った。
「それはそうだな。突入するメンバーも当初の予定通りで良いだろう。アリア隊長が残った兵をまとめ、ウラガンは総大将だからな。お前はここに居て住民を守ってくれ。」
「お前に言われなくてもそのつもりだ。…頼むぞ、セバン!」
二人は拳を合わせる。
「私とアヤも予定通り大丈夫です。」
ワグナーがそういうと、ジェフが寄ってくる。
「私はここで民を守る。だから頼む!サイズを!悪しきものを必ず倒してくれ!」
「分かっています。私としてもこれは他人ごとではありませんからね。お任せください。」
そう言いながらワグナーはジェフの肩を抱く。
アリアはガルドに声を掛けていた。
「ガルド、貴様は私の部下だ、見事任務を果たし…必ず帰ってこい。」
「ヘヘへ…隊長からそう言われるのは、なんか嬉しいですね。」
ガルドはふとアヤの方を見る。アヤの表情は、少なからずこの数日間で見せたどの表情とも違った。
普段元気な彼女から想像もできないほど、冷静な顔をしている。
「あ、アヤちゃん?大丈夫?」
流石に心配になったガルドが声を掛ける。「え?」と言って振り返るアヤはいつもの顔に戻っていた。
そして、出撃する4人にアリアが作戦を説明する。
「あらためて作戦を伝える。目標は我が領地鉱山内に不法滞在する愚か者の殲滅。そして人質として操られている兵士の救出だ。敵は大型クモとゴーレムを配置していると思われる。以降はホーキンス隊長の指示に従い行動するように、以上!」
そういうとアリアは敬礼する。そしてガルドとホーキンスは敬礼を返す。
そして4人は敵地鉱山へと足を進めた。
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