第11話

そいう雄たけびを上げると、ウラガンとホーキンスは突撃した。まず手前に居た2体をウラガンとホーキンスが突きで額の宝石を砕く。全く同じタイミングだった。


そこから後ろの2体が建物の破片を投げつける。それをウラガンとホーキンスは左右に回避。そしてウラガンがホーキンスに向かって走っていくと、ホーキンスは槍下げる。そして、ウラガンの片足が乗った瞬間「うらぁ!」という声と共に槍を持ち上げ、ウラガンを空中へ飛ばす。


空中へ飛びあがったウラガンは回転しながらゴーレムの額の魔石へ一閃。額の魔石が割れたゴーレムは崩れ落ちる。ウラガンが着地すると後ろからもう一体のゴーレムが手を伸ばす。だが、その手がウラガンに届く前にホーキンスがハルバードで額の魔石を破壊する。


完全に息の合ったコンビネーションだった。それは二人がコンビを組んでいたあの頃のままだった。


「おい!ウラガン、なんでお前政治家になんてなったんだ!?まだまだ現役じゃねーか!」


最後の2体を前にホーキンスが声を掛ける。


「セバン!それ今答えないとダメか!?」


「ああ、今答えてほしいね!色々あったが、俺たち銀翼の兄弟は今こうして再結成したんだ!これが終わったらどうせお前答えないだろ!?」


そういうと最後の二体のゴーレムが同時に突進してくる。さっきまでの4体と比べるまでも無く素早い突進だったが、それぞれ左右に回避する。そしてウラガンが叫んだ。


「そうだな!じゃあ教えてやるよ!お前のせいだよ!兄弟!」


そうウラガンが答えると、ホーキンスは一瞬ウラガンの方を見た。


「なんで俺のせいなんだよ!?あ、わかった!踊り子のリマを口説くためだったんだろ!?あいつ金にしか興味無かったし、あの時は負傷者手当てで俺の方が金持ってたからなぁ!」


「違う!お前が…俺のせいで左手を失ってから不便してたろ!?それなのに国は戦争負傷者に手当て払ってはい終わりだ!俺はそれが気に入らなかった!だから内部から変えようとしたんだ!」


そう話している間にもゴーレムの攻撃は激しさを増す。それを綺麗に息の合ったタイミングで躱し続ける二人。


「なんだよそんなことか!俺の左手は俺のへまだ!で、横領罪って何やったんだお前!?」


「横領!ああ、あれか!食料を金を孤児院に横流したんだ!これから国を支えるのは子供たちだ!それを分かってない馬鹿な政治家がこの国には多くてな!横領じゃなくて英断と言ってほしいな!」


「最後に!なんで俺を首都の教官に推薦した!聞いたぞ!お前が推薦状出したって話!」


「それはな!」


そこまで言うと、二人が同時に地面にたたきつけられたゴーレムの腕を蹴って中に舞う。そして空中で反転し、額の魔石を落下の勢いで貫く。


「お前の娘の入学祝だ。」


「そりゃご丁寧にどうも。」


お互い顔を見合わす。そして魔石を貫かれたゴーレムは崩れ落ち、二人は地面に降りた。


「それに…俺はこれがあったから頑張れたんだ。」


そう言ってウラガンはポケットから銀色の左側の羽のバッジを取り出す。


「なんだよ…お前も持ってたのか…それ…」


そういうとホーキンスはポケットから銀色の右側の羽のバッジを取り出す。


ウラガンがそのバッジを左手で握り、ホーキンスはバッジを右手で握る、そしてお互いの拳を当てる。


時が移り、立場が変わっても変わらない結束と友情が二人にはあった。


「さて、兄弟、どうする?」


バッジをしまいながらホーキンスがウラガンに尋ねる。ウラガンもバッジをしまいながら答えた。


「南側は任せるとして、領主館へ移動するぞ。あちらが本丸だ。絶対に落とされる訳にはいかんからな。」


ウラガンはすっかり元の落ち着いた領主へ戻っている。それを見てホーキンスは少し笑った。


「へいへい、じゃあ行きますかね。ウラガン様。」


そう茶化すように言うと、二人は領主館へ向かった。


一方南側ではゴーレムと大型のクモの魔物が確認できるだけで計10体ほどいた。クモに関しては大体人2人分の大きさだろうか?通常のクモのサイズを考えれば大型であることがわかる。


ガルドはロングソードを抜いて、2小節の呪文を詠唱する。すると、剣に氷の刃が形成される。


「よっしゃ!それじゃ行きますかね!」


そういうと、ガルドは駆け出す。最初のターゲットは大型のクモだった。ガルドは跳躍からの一閃を放つ。

大型のクモはその刃を体全体で受けることになり、真っ二つにされた。


すると、一体のクモがガルド目掛けて跳躍してくる。ガルドが構えると「バンッ!」という音の後にクモが吹き飛び地面に落ちる。地面に落ちたクモは火だるまになり動かなくなった。


ガルドが目線をずらすと、そこには鉄砲を構えたワグナーが居た。銃口からは煙が上がっており、クモが燃えたことから恐らく炎熱系の弾丸を使用したのだろう。


「大丈夫ですが?」


ワグナーが声を掛けると、ガルドは左手の親指を立てて返事をする。


「ナイス援護!アヤちゃんは?」


「あっちですね。」

そうワグナーが指さした方向を見ると、アヤは4体のゴーレムに囲まれていた。


しかし、突如一体のゴーレムが切り刻まれ、その場で崩れ落ちる。倒れたゴーレムの後ろにはアリアが立っていた。


「あっちは大丈夫そうだな。」


ガルドはそういうと、目の前の残り4体のクモに集中した。


そのうち2体が同時にガルド目掛けてとびかかってくる。ガルドはすかさず剣を左下から右上へ切り上げた。飛んできたうち1体は顔の部分を両断され、地に落ちた。もう一体は足を数本斬った程度で、ガルドの後方に着地した。


クモは消化液を吐いてきた。ガルドはクモの右方向へ体を回転させる。クモは足を斬られているにも関わらず、まだしつこく飛び掛かりのタイミングを見計らっている。


すると後ろから「バァン!バァン!」とワグナーの発砲音が二回響いた。どうやら後ろは片付いたようだ。


その音にびっくりしたのか、クモはガルドに向かって飛び掛かって来た。しかし今度は真正面。ガルドは飛び上が前転しながらクモを一閃。今度はど真ん中に直撃したようで、斬られたクモは中央部から真っ二つに裂けて絶命した。


ガルドはすぐにアヤたちの方を向く。すると、今まさにアヤが抜刀しようとしていた。アヤが抜刀し、その場で一閃、それから納刀する。するとゴーレム2体の体がバラバラに引き裂かれる。どうやら一閃に見えたが数回瞬間的に斬っていたようだ。


(やっぱりすげぇ…)


ガルドは感心する。残りゴーレム1体はアリアの前に居た。アリアのレイピアは火をまとい始める。アリアのサーベルは決して魔術付与などされていない。


あれがアリアが特別と言われる理由。魔剣化という魔術だった。ガルドも一度見せてもらった程度で、そのときは組手という事でアリアも手を抜いていたが、どうやらあれが通常状態らしい。


魔剣化はあらゆる武器にあらゆる魔術を付与するもので、武器の耐久力や材質によって微妙な調整が必要なのだが、アリアはそれが完璧にこなせるのだ。


通常そこまで魔術を体得しようとすると才能がある者でも大体50年程度の修業が必要とされているが、アリアはあの若さで体得していた。


アリアが構えを取る。右手に剣を構え、突きの体勢を取っている。レイピアならではの構えだ。


両手を上げたゴーレムが先に動く、アリアは動じることなく、ゴーレムの魔石だけを一突き。


本当に力など入っていないように「トン」と付いた。


それだけで魔石が割れてしまい、ゴーレムはその場に崩れた。


アリアはレイピアの火を払うと、鞘に戻す。


「全員怪我はないか?」


アリアがそういうとそれぞれが無事であることの合図を送る。


「ガルド、お前の話を聞かねばならんしな。我々も領主館へ移動しよう。」


アリアがそういうと、全員がアリアに続いた。

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