第102話【戸惑い】
目が覚めるといつものベット上の天井が見えました。
さっきまでのことは夢だったんでしょうか……。
涼介に抱きしめられた時のあの感覚はしっかりと覚えている。
眠たい目を擦りながら起き上がると腕を枕にして涼介が近くで寝ていた。
本当に夢じゃなかったようだ。
「っっっっ」
叫びたくなるほどの嬉しさが込み上げてくる。
しかし、気持ちよさそうに寝ている涼介を起こさないために声を出すのは抑えた。
私は先輩の彼女になったということでいいのでしょうか……。
あの好きとは異性としてということであっているでしょう。
つまり、両思いということです!
幸せで心が満たされる。
それは風邪のことなど忘れてしまうほどに。
あっ……。
あの時のことをまた思い出していると告白の返事をしていないということを思い出した。
うぅ……改めて言うのは恥ずかしいですね。
それに周りには報告すべきなのでしょうか。
涼介に改めて好きというのも恥ずかしいし、周りに言うのも恥ずかしかった。
でも………。
付き合ってるということは先輩は私のものです。
もうあの女の人と先輩が2人だけで歩くことはないでしょう。
ていうか、想像するだけでも嫌です。
そんなことしたら絶対に許しません。
それと先輩は優しいので先輩に好意をもつ人が増えたら……。
嫌だ。
先輩は私のものです。
誰にも渡しません。
そう考えると周りに付き合っていることを明かすのは必須事項だ。
わざわざ人の彼氏に色目を使う女なんていないだろう。
でも、どうやって知らない人にも伝えれば……。
しばらく考えているといい案を思いついた。
先輩には頑張ってもらわないといけないですし、私も少しの間辛い思いをしますけど、いいです。
これは私のことが好きなのに、私以外の女と二人で歩いていた先輩への罰です。
凛華は楽しそうに笑いながら涼介の頭を撫でた。
◇◆◇◆◇◆
目が覚めると目の前に凛華がいた。
「おはようございます先輩」
その声を聞き頭が覚醒し始める。
「あぁ……おはよう」
腕を枕にしていたため痛い。
「もぉ、彼女の前なんですからもっとシャキッとしてくださいよ」
凛華にそう言われ顔が熱くなるのがわかった。
つまり、そういうことなのだろう。
俺たちは付き合い始めたということでいいのだろう。
「す、すまん……」
「先輩凄い照れてますね」
凛華は笑いながらそう言った。
「いや、まぁ、だってな……」
思わず歯切れが悪くなる。
誰かと付き合うなんて初めてで右も左も分からない。
前のように接すればいいのかいつも以上に大切にしやきゃいけないのか、分からないことだらけだ。
「もぅ……先輩も普通にしてくださいよ
その……私も普通に接するので……」
凛華の顔を見ると顔が赤かった。
どうやら頑張っていつものように接してくれていたようだ。
「す、すまん……」
「そこは、わかったですよね?
いつもの先輩ならそうします」
「そうだな……わかった」
「…………」
「…………」
お互い緊張しているのか無言になる。
「お、お腹空いたな……」
「そ、そうですね…
何か食べましょうか」
「俺が作るぞ
病人に無理させるわけにはいかないしな」
「ありがとうございます」
◇◆◇◆◇◆
涼介はキッチンで卵のお粥を作っていた。
凛華はソファーに座ってテレビを見ているようだった。
「ふぅ……」
凛華と前は普通にしていた会話ですら恥ずかしくてできない。
いつもと変わらないはずなのに数倍可愛くなったように感じる。
今だってテレビを見るその姿ですら愛おしい。
凛華はこちらの視線に気がついたのか目が合う。
数秒見つめ合ったあとお互い目を離す。
言葉は交わさない。
いつもなら見ていたらからかってくる凛華だが、からかってこない。
他のカップルもこうなのか……?
今まで興味がなかったためわからない。
このままではいけないと思うのだが、どう踏み出せばいいかわからない。
踏み出しすぎると恥ずかしくなる。
どの辺までがお互い耐えられるのかまだわからない。
というか、俺はまだ好きって言われてないな……。
さっきの会話で付き合い始めたということはわかったのだが、ちゃんと凛華からOKを貰っていない。
言われたら死ぬほど恥ずかしいと思うが言われたい。
そんなことを考えながら料理を作っていた。
◇◆◇◆◇◆
「出来たぞ」
「ありがとうございます」
凛華はちょこんと椅子に座る。
「食べれそうか?」
「はい
でも……」
凛華は顔を上げた。
「せ、先輩に食べさせて欲しいです」
「えっ……」
思わず驚く。
嫌なわけじゃない。
今までも何度かやった事だ。
だが、今はその時と状況が全く違う。
「嫌ならいいですよ……
私は先輩が風邪引いた時に食べさせてあげましたけど……
だから私もして欲しいなって思ってましたけど、嫌ならいいですよ……」
凛華の声がだんだん小さくなっていく。
可愛い。
そんなことを考えてくれていたのかと思うと無性に嬉しくなる。
「わかった
やる」
「……ありがとうございます…」
涼介はスプーンでお粥をすくうと少しずつ凛華に近づける。
「口を開けてくれ」
「はい…」
凛華は恥ずかしそうに口を開ける。
「美味しいです」
「そ、そうか……」
凛華に食べさせながら自分も合間合間に食べていたが、味を感じる余裕なんてなかった。
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