第101話【告白】
中村家に着くと涼介はポストの下に埋まってると言っていた鍵を取った。
1度深呼吸すると涼介は鍵を開け家の中に入った。
そして、真っ直ぐと凛華の部屋へ向かった。
凛華の部屋は司の部屋の隣。
そこで涼介はもう一度深呼吸をした。
ドクンドクンという心臓の音が伝わってくる。
目をつぶり気持ちを落ち着ける。
そして、意を決して扉を叩いた。
◇◆◇◆◇◆
鍵を開ける音で目が覚めました。
おそらくお兄ちゃんでしょう。
あまりにも早く帰って来たように感じたため、凛華は時間を確認した。
まだ9時にすらなっていなかった。
お兄ちゃんが私を心配して学校をサボったんでしょうか……?
少し過保護すぎると思う。
足音は少しずつこちらに近づいてくる。
止まったかと思うとドアをノックする音が聞こえた。
「はい、なんでしょう」
「あぁー、お、俺だ」
「え、え、えぇ!?!?せ、先輩!?!?」
凛華は涼介が来るとは微塵も思っていなかった。
凛華は慌てて体を起こし、髪の毛手で少し整えると、立ち上がり扉を開けようとした。
しかし、ずっと寝ていたため、自分の体がいつもの倍以上に感じ、倒れてしまった。
◇◆◇◆◇◆
「大丈夫か!?」
凛華の驚いた声が聞こえたかと思うと、バタンと倒れる音が聞こえた。
思わず声を上げたが返事がない。
「入るぞ」
そう断りをいれると涼介は凛華の部屋の扉を開けた。
中に入ると凛華が倒れていた。
「おい」
軽く方を摩る。
「ん、んんーー、せん…ぱい………」
「大丈夫か?」
「大丈夫…です」
そう言うと凛華は少しずつ立ち上がりベットに座った。
「えっと……風邪大丈夫か?」
いきなり凛華が倒れていたところを見たため考えていたことを忘れてしまった。
「ま、まぁ……
それより、なんで先輩は来たんですか?」
凛華にそう言われ思わず目を背ける。
「すまん……俺の顔なんて見たくなかったよな……」
「え?」
昨日言われたことを思い出しながらそう言うと凛華は驚いたような顔をしていた。
「いや、昨日電話した時お前は俺の声なんて聞きたくないって……」
改めて言うと辛くなる。
◇◆◇◆◇◆
熱があるせいなのか、先輩に会えて嬉しいのか頭がふわふわしてきました。
そんな頭で凛華は涼介の言葉を聞く。
「えっと……昨日声を聞きたくないって言ったのはあの夢を思い出すからで別に今は聞きたくないわけじゃなくてむしろ嬉しいといいますか……なんといいますか……」
自分でも言っていて何が言いたいのかわからなくなってくる。
「でも、お前は俺の声を聞きたくないって……」
「だからそれはあの時のことであって……」
そう言いながら凛華は回らなくなってきた頭を必死に回転させ昨日のことを思い出す。
すみません
先輩の声聞きたくないです。
………確かにそう言ってた。
今は聞きたくないと言おうとして、間違って言ってしまっていた。
「えっと……先輩………
その……非常に言い難いんですが、昨日は今は聞きたくないですって言おうとして………」
それで心配してここまで来てくれたことに申し訳なさを感じる。
「え……?」
◇◆◇◆◇◆
どうやら凛華の言い間違いだったようだ。
それをずっと引きずっていたなんて恥ずかしい。
穴があったら入りたい気分だった。
「えっと……先輩、わざわざそれを気にして来てくれたんですか?」
「あ、あぁ……」
「なんか……ごめんなさい」
お互いいたたまれない雰囲気になる。
「えっと……先輩はそんなに私が間違って言ったことを気にしてたんですか?」
「あぁ」
「えっと……それはどうしてですか?」
「それは………」
涼介は今心臓が飛び出しそうな感覚だった。
今日、今この瞬間凛華に告白しようと思ったのだ。
「それは……」
涼介はじっと真っ直ぐ凛華を見る。
「お前が好きだからだ」
◇◆◇◆◇◆
突然先輩からそんなことを言われた。
突然すぎて内容が理解できない。
でも、嬉しい。
今死んでもいいくらいに嬉しい。
時間が経つにつれその言葉の意味を理解し始める。
その度に嬉しさが増していく。
そうして凛華はいつの間にか泣いていた。
「えっと……迷惑だったよな……」
涼介には凛華が泣いている理由が分からないようだった。
「ち、違います……嬉しいんです、とってもとっても嬉しいんです
これ夢じゃないですよね……」
凛華は手で涙を拭いていた。
「も、もちろんだ……」
「じゃあ、私の事抱きしめてください」
両思いだとわかったためなのか、抑えていた思いが溢れてきました。
ずっと先輩に抱きしめて欲しいと思ってました。
「………」
真剣な顔で涼介は近づいてきた。
そして手を広げると涼介は優しく凛華を包み込んだ。
先輩はとっても暖かくて気持ちいいです。
幸せな気持ちが溢れてくる。
もう我慢しなくていいんだ。
いつでも先輩を感じられるんだ。
そう思うと凛華はさらに幸せな気分になった。
◇◆◇◆◇◆
今凛華はぐっすりと布団で寝ていた。
涼介は心地良さそうに眠る凛華の顔を見ながら状況を整理していた。
俺は凛華と付き合っているということでいいのか?
状況が理解出来なかった。
告白したら凛華が泣いて、でもそれは嬉し泣きで、抱きしめて欲しいと言われ、抱きしめたらそのまま寝てしまった……。
おそらく、返事はOKと言うことなのだろうが、はっきりとした返事が貰えてなかった。
どうすればいいんだ。
今更学校には戻れない。
それに、凛華をこのまま放置しておくわけにはいかない。
何をしようかと迷い涼介は凛華を見た。
本当に気持ちよさそうに寝ているな……。
寝ながらもたまに笑っている。
それがどうしようもなく可愛い。
そんな可愛い女の子が自分の彼女になったなんて信じられない。
付き合ったと言うことは………。
思わず凛華の口元を見る。
カップルならしても当然の行為を思い浮かべる。
…………。
おそらく、付き合っていればその先をすることだってあるだろう。
でもまだ、正式に相手の合意を貰っていなかった。
そうだ……俺はまだ付き合ってないんだ。
でも……。
あれはどう考えてもOKのサインだった。
だから……。
涼介は悶々とした気持ちで凛華が起きるのを待っていた。
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