第100話【覚悟】
今先輩の声聞きなくないです。
それをどういった意味で、どういった気持ちで言ったのかは分からない。
しかし、そう言われたらもう何も出来ないだろう。
俺が何をしたのか。
俺の何が悪かったのか。
分からないが自分の気づかないうちに何かをしたのだろう。
その事を考えていたせいで結局夜はあまり眠れなかった。
眠い目を擦りながらいつもの曲がり角に着く。
そこにいつものいる少女はいなかった。
来るかわからないが涼介は待っていた。
5分待っても来ず、10分待っても来なかった。
さすがに10分も待っても来ないとなるともう先に行ったのだろうと思い涼介は学校1人で向かった。
◇◆◇◆◇◆
教室に入ると自分の前の席を見た。
司が来ている様子はなかった。
「はぁ……」
席に座りため息をつく。
「おはよぉ
ため息なんかついてどうしたのぉ?」
振り向くとやはり春夏がいた。
「ちょっと眠いだけだ」
「そうぅ?
なんかそれだけの理由じゃないと思うけどなぁ?」
「気のせいだ」
正直今誰とも話したい気分じゃなかった。
「ほんとぉ?
今うちと話してるけど、またうちの事なんて全く考えてなかったでしょぉ?」
春夏はその辺の感はいいのか、今の涼介があからさまに元気がないとか分からないが実際その通りだった。
「ほっといてくれ」
「ほっけないよぉ
なんかあったなら誰かに話した方が楽になると思うけどなぁ?」
「大丈夫だ」
「振られたの?」
あの時と同じように真面目な口調でそう言った。
「いやぁ、違うかぁ
涼介くんはそんなことじゃ引きずらなさそうだしなぁ
振られることよりきつい事を言われたとかかなぁ?」
またいつもの口調に戻りそう聞いてくる。
「………」
あっていたため何も言えなかった。
「何言われたか分からないけどぉ、とりあえず相手と話してみた方がいいよぉ」
「………場所を変えてもいいか?」
「いいよぉ」
春夏と2人で教室を出る。
◇◆◇◆◇◆
「ここでいいかなぁ?」
使われていない教室に2人は居た。
「あぁ」
「それでぇ、話って何かなぁ?」
「さっきの事だ」
「やっぱりあってたのかなぁ?」
「あぁ、声を聞きたくないって言われたんだ」
思い出すだけでも辛くなる。
「それは辛いねぇ
なんで言われたか理由は分かるのぉ?」
「いや、わからない」
「じゃあ………まだその人のことが好きなの?」
春夏は真っ直ぐこちらを見てきた。
思わず生唾を飲む。
「あぁ、好きだ」
当たり前だ。
嫌いと言われたわけじゃない。
諦めきれなかった。
「そっかぁ……なら会って話せばいいと思うよぉ?
うち前言ったでしょぉ?
相手のことをよく見て考えるって会ってみて考えればいいと思うよぉ」
「……」
正直怖かった。
会って直接言われたら……。
そう思うと足が竦む。
「涼介くんの思いはその程度だったのぉ?」
「…………」
違う。
だけど怖い。
「違うよねぇ、涼介くん……うちのことなんて全然見向きもしてくれないもん……」
春夏の悲しそうな声が聞こえた。
「男ならシャキッとした方がいいと思うよぉ
当たって砕けろだよぉ
それで砕けたらうちが慰めてあげるからねぇ
安心して砕けてねぇ」
「いや、大丈夫だ」
なんでか分からないが怖いという気持ちが消えていく。
どうしてあんなことを言ったのか聞こうと思えた。
「ならすぐに言った方がいいと思うよぉ
善は急げっていうでしょぉ?」
「そうだな、ありがとう」
それだけ言うと涼介は教室を出た。
スマホを取り出し司に電話する。
「もしもし」
司はすぐに出た。
『どうしたんだい?』
「凛華って今日学校来たのか?」
『凛華は昨日の放課後から風邪を引いててね……今日は休むみたいだよ』
「そうか、なら悪たが俺は今日学校をサボる」
「そうかい
今日僕は夜まで帰らないよ
お母さんたちも仕事で遅いと思うよ
鍵は失くした時の予備がポストの下の地面に埋まってるよ
凛華をよろしくね」
「あぁ、すまない」
涼介は階段を上る生徒の波に逆らい階段を下りる。
向かうは凛華が居る中村家だ。
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