第99話【悪夢】
そこは夕焼けが綺麗に見える学校の屋上だった。
私は一人部活に勤しんでいる生徒たちを見ていた。
そんな時扉が開く音がして後ろを振り向く。
そこに居たのは涼介だった。
「先輩……」
放課後に一緒に帰る約束をしていたのに、それを破ってしまった。
その罪悪感が涼介の顔を見た瞬間襲ってきた。
「お前に話したいことがあるって言ってたな」
夕日が2人を照らし、秋の心地よい風が周りに吹く。
「な、なんですか?」
こんな所で告白されたら……。
そんなことを考える。
はっきり言って最高だった。
そんなことを考えていた。
「入ってきてくれ」
涼介が突然そんなことを言った。
「えっ……?」
凛華が驚いているとドアは開き一人の女の人が入ってきた。
見たことがある。
月曜日に先輩と一緒に帰っていた……。
放課後に一緒に廊下を歩いていた……。
その女の人とよく似ていた。
「こいつは俺の彼女だ」
「やだっ、もぉ……彼女なんて恥ずかしいよ」
凛華の目の前にいる女の人は嬉しそうに涼介の腕を叩いていた。
聞きたくない事だった。
なんでわざわざこんな場所で言うのだろうか。
なんでわざわざ自分に言うのだろうか。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…………。
………なんで私じゃないんだろう。
「………おめでとうございます……」
それ以外言えなかった。
泣きたい気分だった。
「じゃあそれだけだ」
そう言うと涼介と涼介が彼女と紹介した人は手を繋ぎながら去っていった。
夢であって欲しい。
夢じゃないと嫌だ。
信じたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
最悪な気分だった。
◇◆◇◆◇◆
凛華は最悪な気分で目を開けた。
頭は痛く、体は重い。
「………そっか私……」
少しづつ頭が回り始める。
凛華は濡れて帰ってきて気分が悪くて寝ていたのだ。
気分は寝る前より最悪だった。
心なしか体調も悪化している。
「はぁ………」
さっきのことが夢だったことに安心しつつ、夢であったとしてもあんなにも嫉妬していた自分に嫌気がさしていた。
そんな時スマホが鳴った。
相手は涼介だった。
あんな夢を見た後だったため声なんて聞きたくなかった。
しばらく鳴っていたと思うと静かになった。
しかしすぐに再び電話がかかってきた。
凛華は仕方なく電話に出る。
「もしもし」
「あ、やっと出たか……」
涼介の声を聞くとさっき見た夢が頭を過る。
消え去れ!消え去れ!
あれは夢だ。
ありえない。
違う。
先輩は私のだ。
忘れようと必死になった。
「聞いてるか?」
涼介の声で意識が戻ってきた。
「すみません……」
今日はもうダメだと思った。
「切っていいですか?
先輩の声聞きたくないです」
今は聞きたくない気分だった。
聞いているとさっきの夢が脳裏を過ぎるのだ。
忘れようとしても忘れられない。
正しく悪夢だった。
「いや、ちょっと……」
「ごめんなさい」
涼介がなにか言おうとしてたが凛華は電話を切った。
「はぁ……」
凛華は天井を見ながらため息をついた。
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