第98話【信じられないこと】
今日はモヤモヤが晴れなくて授業もあまり集中出来なかったです。
でも、先輩とRAINをしていたらそんな感覚が嘘みたいに消えちゃいました。
むしろいつもより体が軽いくらいです。
凛華は軽い足取りで階段を昇っていく。
◇◆◇◆◇◆
「凛華ちゃん、今はもう元気そうだね」
「そうですか?」
「うん、お昼はどこか上の空って感じだったけど、今は凄く嬉しそう」
他人から直接そう言われると恥ずかしくなる。
「き、気のせいですよ…」
どうやら私は思った以上に先輩に初めて「一緒に帰ろう」と言われたことが嬉しいようです。
「そうかな?
でも、さっきからチラチラと時間も気にしているようだけど」
「そ、それも気のせいですよ……」
これはもうちょっと気を引き締めて残り15分勉強をしないといけないですね。
今は16時45分。
部活が終わるのがいつも17時だ。
先輩は恐らく五分ほど前に来るでしょう。
凛華は早く会いたくて仕方がないという様子だった。
その理由は昨日のことが関係しているんだろう。
あの女の人……。
誰かはわかりませんが、私の方が先輩に好かれています。
あの女の人は恐らく先輩から一緒に帰ろうなんて言われたことないはずです。
だから私の方が上です。
そうやって話したこともない人と自分を較べていると手が止まっていた。
いけません、いけません。
集中です……。
凛華は深呼吸して問題集を見た。
その様子を蛍は楽しそうに見ていた。
「どうしたんですか?」
「あっ、なんでもないよ
なんだか、凛華がとっても嬉しそうだから」
「だから、気のせいですよ!」
そう言いながら時間を確認する。
先程から既に5分が経過していた。
今行けばちょうど先輩と会えるタイミングかもしれません。
そう思ったが、蛍をほっとくわけにはいかなかった。
早く涼介に会いたい。
そんな気持ちが伝わったのか蛍は口を開いた。
「あっ、私今日用事を思い出したから今日はもう終わりでいいかな?
えっと……部室の戸締りとか鍵の返却とか私がやっておくから」
蛍が早口にそう言った。
どうやら気を使わせてしまったらしい。
「でも……」
さすがにそれは申し訳なくなる。
「大丈夫だよ!
たからほら凛華ちゃんは早く行って?」
事情を察しているのか分からないが、今の凛華には好都合だった。
「ありがとうございます」
蛍に礼を述べ凛華は部室を出た。
◇◆◇◆◇◆
凛華は誰もいない廊下をスキップをしながら歩く。
今から涼介に会えると思うと気分がさらに良くなる。
窓を見ると天気はあまり良くないが、凛華の心は快晴だった。
気のせいか視力も良くなった気もした。
凛華はそんな目で窓から外を見る。
中庭で部活をしている生徒がいた。
1階では急いで職員室に入る生徒もいた。
恐らく提出期限がギリギリなんでしょう。
次は上の階である4階を見た。
そこには涼介と………昨日一緒に帰っていた女の人がいた。
また仲良さそうに話している。
凛華の気分は土砂降りの雨となった。
それに合わせてか外も急に雨が降ってきた。
なんで一緒にいるんでしょうか。
先輩はこれから私と会うのに。
先輩は私に話したいことがあるって言ってたのに。
先輩は私に何を言うのか全く分からないが、今先輩あの女の人と2人で歩いていた。
これから私と会う予定なのに今先輩あの女の人と2人で歩いていた。
私に話したいこと………。
嫌な予感がした。
嘘だって、ありえないってそう思っても現実はこうなのだと訴えてくるような感覚に襲われる。
先輩とあの女の人が付き合ってるなんて嘘です。
絶対ありえません。
しかし本当にそうとは言いきれるのだろうか?
私も先輩の全てを知っているわけでは無い。
私の知らない先輩がいるかもしれない。
私の知らない先輩……。
自分の知らない涼介がいると考えただけで胸が張り裂けな気分になる。
いっそ先輩に会わないで話を聞かない方が、幸せなのかもしれない。
1度そう思うとそれ以外のことが思いつかなくなっていた。
そうして凛華はいつの間にか走り出していた。
駆け足で階段を降りると下駄箱に着く。
下駄箱では誰かにぶつかったが、直ぐに自分の靴を取り、外に逃げるように走り出した。
雨なんて知らない。
凛華は逃げるように外を走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます