第95話【嫉妬】

「はぁ……」


凛華は布団でため息をつく。

普段ならこの時間には起きてお弁当を作っている。


「はぁ…………」


もう一度ため息をつく。


昨日の放課後から気分が晴れません。


凛華はクマのぬいぐるみの鼻を突きながら昨日のことを思い出す。


◇◆◇◆◇◆


帰りのHRが終わり凛華はクラスメイトに挨拶をすると教室を出た。


バイト前に少しでも家で勉強しようと思ったのだ。


下駄箱に行くと2年生の下駄箱の方に涼介がいた。


忙しいと言っていたが、普通に帰るようなら声をかけようと思い少し様子を伺っていた。


しかし、涼介の隣には1人の女子生徒がいた。


涼介と同じ区画の下駄箱にいるため同じクラスなのだということが分かる。


先輩の隣にいるあの女の人少し先輩と近い気がします。


凛華には2人の距離が一般よりも近いように感じた。


凛華は気になったためこっそりと2人の後をつけることにした。


私は家に帰るだけです。

別に先輩とあの女の人がどんな関係なのか気になるわけじゃないです。


そう自分に言い聞かせながらバレないような距離を保ちながら歩く。


2人は仲良さそうに話していた。


それを見ていると心の奥底が痛くなる。


体育祭の時に感じていたのと同じ感覚だ。


私は嫉妬しているんでしょうか……。


そうだとしたら自分は自分が思っている以上に重い女なのかもしれない。


思ったよりも自分の器が小さいと思っていると、涼介と隣の女子生徒が足を止めていた。


あの女の人が先に止まったから先輩が止まったんでしょうか。


止まった理由を考えたが、涼介が女子生徒の方をじっくりと見ていたためどうでもよくなった。


先輩はなんであんなに見ているのでしょう。

私でもあんなにじっくりと見られたことがないのに……。


しばらくして女子生徒の方が何かを言い涼介は目を離していた。


なんであんなに見ていたんでしょう……。


その理由が気になって気になってしょうがなかった。

それに何事も無かったように2人は話している。


なんで2人が一緒に帰っていたのか。

なんで先輩はあの女の人をじっと見ていたのか。

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで………。


さらに胸の痛みが強くなった。


いつも別れる道に着く。

2人のやり取りをもう見たくないと思った。

しかし、ついて行った。


仲良さそうに話しながら2人は涼介の家に着く。

そのまま2人は家の中に入っていた。


どうして……。


気になって気になって仕方がない。


私の先輩なのに……。

絶対私の方が先輩のことをわかってるし、絶対私の方が先輩のことが好きだ。


凛華は重くなった足を無理やり動かしながら家に帰った。


◇◆◇◆◇◆


思い出すだけでも胸が張り裂けそうな気分です。


凛華は今でも誰かも分からない女の子よりも自分の方が優れていると思う。


それでも自分の誘いは断られ、選ばれたのはあの女の方なのだ。


どんなに自分が相手を思っていようとその事実は変わらない。


それなのにずっと考えてしまう自分にさらに嫌気がさしていた。


結局いくら忘れようとしても忘れられず、胸の中のモヤモヤが強くなるだけだった。

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