第52話【部室でのお昼休み】
「先輩今日は一緒にご飯食べましょ」
勢いよく扉が開かれたと思うとすぐに凛華がそう言った。
「うるせぇ」
反射的にそう言ってしまった。
「あれ?
今日は寝てないんですね」
「まぁ、昨日は休めたからな」
頑張って昨日の凛華との事は思い出さないようにしながらそう言った。
「それは良かったです」
「ていうか、なんでお前は俺が毎回寝てるってこと知ってるんだ?」
まるでいつも見ていたかのような言い方をしていた凛華の言葉が気になった。
「へ?あっ、えーと………偶然お昼休みにここの前を通り掛かった時に先輩が寝ているのが見えただけです
それて毎回寝てるのかなって思っただけで、決して毎日先輩がどうしてるかって見に行ってたわけじゃないです」
何故か必死になっている凛華の様子がますます怪しいと思った。
「本当か?」
「ホントのホントです
それよりも、またスイミングスクールに通い始めたって言ってましたけど、そんなに練習がキツイんですか?」
「いや、あれはキツいってレベルじゃない……」
深刻そうな顔をしている涼介を見て、凛華はさっきの会話を上手く流せたことに対して安堵していた。
「じゃあどんななんですか?」
「地獄だな、毎回毎回こっちが死ぬ気でやってるなんてお構い無しだ」
「例えばどんなことしているんですか?」
買ってきたものを食べながら2人はいつのように会話を始めていた。
「そうだな……例えばだが、制限タイムがあったとして、4本やるうち1セットで3本は切らないといけないってメニューを3セットやったとしたら、1セットごとの目標を達成出来なければセットごとの休憩の時に上がって腕立て伏せをさせられたりするんだ」
凛華はあまりピンときていないような顔をしていた。
「とりあえず、1セットでも落とすと次のセットも切れなくなるってことだ」
「んー、まぁなんとなく理解しました
先輩も大変なんですね」
「そうだと思うなら俺を労ってくれ」
「わかりました
そんな先輩には人参を上げましょう」
凛華は食べていたサラダパスタの人参を1本掴むと涼介の口元まで近づけた。
「いらねぇぞ」
「でもさっき労ってくれって言ってたじゃないですか
これが私からの先輩への労いです」
ドヤ顔しながら凛華は言った。
「人参1本分のしか労わないのかよ…」
「隙ありです!」
涼介が口を開けた時に凛華は素早く口の中に人参を押し込んだ。
「どうです?
美味しいですか?」
「人参だな」
「人参ですからね
そうじゃなかったら大問題です
それじゃあ次は先輩のやつをください」
「俺のに人参はないぞ」
「いえ、そのアサリちゃんでお願いします」
涼介が食べているのはアサリのパスタだが、涼介はアサリを序盤と終盤に半分半分食べるタイプなので、終盤の今はアサリが結構少ない。
「割にあってないだろ」
「私のあーんはどんな高級な料理すらも超えますから逆にアサリちゃんだけで済むならいい方ですよ」
「どんだけ自分のこと可愛いと思ってんだよ」
「まぁまぁいいじゃないですか
先輩のください」
涼介は渋々パスタを少々フォークに巻きそこにアサリを足して凛華の口元に近づけた。
「おっ、待ってました」
「はぁ……ほら」
目をつぶりながら口を開けている凛華の口にフォークを突っ込んだ。
「もっと優しく食べさせてくださいよ
まぁ、美味しかったからいいですけど」
「それなら良かったな」
また2人はどうでもいいことを話ながら食事を続けた。
「そろそろ時間だな」
涼介のスマホのアラームが鳴る。
「そうですね」
「眠いが昼も頑張るか…」
「そう言えば、明日の昼休みは書道部が学校のプール使える日ですから来るなら来てくださいね」
「わかった」
会場で1回はやってみたいと思っていたので好都合だった。
「それじゃ」
「はい、また放課後に」
どうやら今日は一緒に帰らなければいけないようだ。
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