第53話【水着】

水曜日の昼休み。

涼介は学校のプールにいた。

今日は書道部だけが使える日らしく涼介以外誰もいなかった。


軽くストレッチをすると、プールに入った。

温度は冷たくはないが暖かくもない。

普通の温度だった。


冷たくないということがわかると安心した。


冷たすぎると体が動かないからな。


そんなことを思いながら軽く泳ぎ始めた。

1人で1コース貸切なのは慣れているが、1人で全コース貸切なのは慣れなかった。


ある程度流し終わると一旦水を飲むために上がった。

それで涼介の他にもう1人プールサイドにいることがわかった。


「あっ、先輩やっと私に気がついたんですね」


「なんでお前がいるんだよ」


当然のように凛華は涼介に話しかけた。


「私だって書道部なんで今この時間ここを使う権利くらいありますよ」


「だとしてもジャージで暑くないのか?」


プールサイドは水着でいることを想定して温度調整されているため、服を着ていると意外と暑い。


「そんなこと言って先輩が私の水着が見たいだけなんじゃないですか?」


「は?

そんなわけないだろ」


「照れなくてもいいんですよ

先輩が正直に見たいって言ってくれたら見せてあげなくもないですよ」


「そんなこと言うもんか

第一水着くらい見慣れてるしな」


水泳の大会場に行けばみんな水着なので別に特別なことでは無い。


「それは競泳用の水着ですよね?

私が競泳用だと思います?」


確かにと思ってしまった。

泳ぐ理由がないなら水着なんてなんでもいい。

そして、ここには涼介と凛華しかいないので何をしても怒られることは無い。


思わず息を飲んだ。

不覚にも見てみたいと思ってしまったのだ。

美少女の水着姿を見たくないと言う人などいないだろう。


「あれれ?

先輩黙っちゃってどうしたんですか?」


「いや、なんでもないぞ

それよりも泳がないとな…」


逃げるように水に入ろうとした。

しかし、凛華が涼介の手を掴み止めた。


「お、おい離せよ」


「先輩……素直になってくださいよ」


そう言いながらジャージの胸のところのファスナーを少しずつ下げていく。


「俺は素直だぞ?」


「本当ですか?

あの時のようにもっと素直になってくれてもいいですよ」


あの時ーー涼介が風邪を引いた時に凛華が看病をしに来てくれた時のことだ。


「…………」


思い出し思わず黙ってしまう。


「ね?先輩、本当は見たいですよね?」


これ以上凛華と会話をしていると時間を無駄に食ってしまうと思ったため仕方なく言うことにした。


「はいはい、お前の水着姿がみたいよ」


「よく言えましたね先輩

ご褒美はなでなでいいですか?」


「なんでそうなるんだよ」


「ふふ

私の水着ですよね

それじゃあ瞬き厳禁ですよ」


そう言いながら凛華はジャージを脱いでいく。

思わず裸になるのでないだろうかと思ったが水着が見えたためすぐにそんな考えが消えた。


凛華が来ていたのはスク水だった。


「いや、スク水かよ」


思わず言ってしまった。


「あれれ?

まさか私のビキニが見れると思ってました?

そう勘違いしちゃってました?」


「うっざ」


そう言って逃げるように飛び込んで水の中に入った。


凛華のスク水は普通に可愛くてドキドキとした。

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