第48話【懐かしい仲間達】
日曜日に涼介は今3年以上前に通っていたスイミングスクールに来ていた。
「おっ、来た来た」
入口の前に二つの影があった。
「お久しぶりです涼介さん!」
俺を見るなり元気よく頭を下げてきたのは
「久しぶりだな
ていうか、大きくなったな」
最後に琥太を見たのは4年前……琥太が小学五年生の時だったため当たり前のことだ。
「ありがとうございます!
自分涼介さんに憧れて1500を始めました!」
華蓮から涼介のことを尊敬していると聞いてはいたがそこまでだったとは思わなかった。
「琥太のやつ今年は地方の大会まで行ったくらい凄くなってるよ」
「マジか
今の俺とか足元にも及ばない感じだな」
「そんなことないっす
涼介さんは今でも凄いっすよ!」
「いや、今の俺なんてもうおじいちゃんレベルだよ」
涼介は自嘲するように言った。
「ほんとに一昨日涼介と泳いだけどゴミだったよ」
華蓮もそんなふうに涼介を笑った。
「いや、慰めろよ」
「えぇヤダ」
「相変わらずお二人は仲がいいですね」
「そんなことねぇよ」
久しぶりに会った仲間と話すのはとても楽しかった。
◇◆◇◆◇◆
着替えてプールサイドに行くと琥太と共に篠村コーチに挨拶に行った。
「お久しぶりです」
丁寧に挨拶をした。
「久しぶりだな
華蓮から聞いたぞ
1500泳ぐことになったんだってな
鈍ったその体きっちり鍛え治してやるから覚悟しておけよ!」
「よろしくお願いします」
内心嫌だがそんなことを言うとさらにしごかれることが目に見えているので大人しくしていた。
その後他の選手コースのメンバーに挨拶に行ったが涼介を覚えているのはほんの数人だけでほとんどは知らないようだった。
「涼介さんが居た時はみんな小学生だったんで覚えてないのも当たり前ですよ!」
琥太はそのことを涼介が気にしているのかと思ったのかそんなことを言ってきた。
「言われなくてもわかってる
どうせ今の俺はアイツらよりも遅いから覚えられることもないだろ」
速い奴は速い奴と仲良くなり遅い奴は速い奴らに見下されるそんな世界に居たため、遅い奴を覚えることなどないだろう。
だからこうして、誰とでも話す琥太は珍しいタイプだ。
「涼介さんだってブランクさえなければ絶対速いですよ」
「ブランクさえなければ……だろ?」
「そうっすけど……涼介さんは凄いですよ」
あの頃の何倍も卑屈になってしまった涼介にとって今の琥太はとても眩しい存在に感じられた。
「とりあえず、ストレッチでもするか」
◇◆◇◆◇◆
それから二人でストレッチをしたが体はめちゃくちゃ硬くなっており、コーチとかに押さえつけられ無理やり伸ばされた。
練習では序盤はなんとかついていけたが、そこで体力を使い切ってしまいそこからは全然だった。
「いやぁ、涼介ダメダメだったね」
今は涼介と琥太と華蓮の三人で帰っていた。
「1週間くらい練習すれば昔の感覚取り戻せるはずですよ」
琥太はまたも涼介をフォローする。
「そ、そうだな」
これをあと10日以上やると考えただけで疲れが押し寄せてきた。
「今日は自分が飯奢りますから元気出してください!」
「おっ、琥太太っ腹だね」
華蓮は喜んでいるが後輩に気を使わせさらに奢られる先輩に威厳なんてあるのか?と思ってしまった。
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