第47話【ラーメン屋】

今涼介の隣には凛華とは別の人がいた。

凛華よりも長い髪を持ちそれを1本にまとめあげている。

髪は少々濡れており泳いでいたということが分かる。


その少女の名前は宮村華蓮。

涼介が昔所属していたスイミングスクールの同期である。

偶然再開し、華蓮に誘われ2人はラーメン屋に向かっていた。


「こうして涼介と二人きりで話すのって初めてだっけ?」


「そうだな

いつもみんなでいたからな」


「だねだね

多分涼介と二人で帰ったって琥太あたりに言ったら羨ましがるんだろうなぁ」


「そうか?

確かにあいつはよく俺に懐いてきてたけど、それももう3年以上前の話だぞ?」


「いやいや、涼介を尊敬してるから絶対忘れてないと思うよ

ていうか、涼介を尊敬するなんてどうかしてると思うけどね」


「そうなのか

ていうか、俺もあいつに特に何かしたってわけじゃないから尊敬される理由がわかんねぇな」


涼介はただ後輩のめんどうを見ていただけでなにかしてあげたというわけではない。


「あの頃が懐かしいね」


「そうだな

俺と彩音と琥太とお前はよく一緒にいたな」


もう戻れないであろうあの頃を思い出し涼介もどこか遠くを見るような目をしていた。


「彩音は高校入学と同時に学校組になるって言って辞めちゃったんだよね」


「そ、そうなのか

残念だったな」


「まぁ、辞めたところで試合会場で会えるからいいんだけどね

涼介もたまには見に来てよね」


「まぁ、気が向いたらな」


◇◆◇◆◇◆

そんなことを話している間に二人は目的のラーメン屋に着いていた。


「ここが私が行きたかったラーメン屋だよ」


「うわあ、なんか見るからにこってりって感じのラーメン屋だな」


店の雰囲気からでも何となく分かるくらいのこってり系ラーメンのオーラが出ていた。


「あれ?

あっさりの方が好きだっけ?」


「どっちかと言うとそうだな」


「まぁ、いっか

さっ、入ろ」


「お、おう」


女の子が自分から進んでこってりラーメンを食べるというのは乙女としてどうなのかと思いながら涼介は華蓮の後に続いた。


◇◆◇◆◇◆


「チャーシューメン大盛り一つ!」


店に入りカウンターに座るとすぐに華蓮は注文した。


「お前選ぶの早いな

てか、よくそんなに食う気になれるな」


「運動して疲れたからね

涼介も早く決めなよ」


「そーだな……俺は辛味噌ラーメンのチャーハン餃子セットで」


メニューを見て自分が好きそうなものを注文した。


「あいよ!」


「涼介も結構食べるじゃん」


「いや、俺もお腹空いたし」


程なくして注文したものが来た。


「あれ?

この餃子三個多くないですか?」


餃子の個数が5つから8つになっていることに気がついた。


「隣の彼女さん大事にしろよ」


「いや、そんなんじゃないですから」


「そうなのか?

まぁ、大人の好意は素直に受け取っとけ

申し訳ないと思うならうちの店を友達に宣伝しとけ」


そう言って店主は別の注文を取りに行った。


「優しい人だね」


「そうだな」


「ていうか、私達の関係ってなんなんだろうね」


「あ?さっきのカップルだと思われたこと気にしてるのか?」


「そうそう

久しぶりに再開して勢いでラーメン屋に誘ったけどなんなんだろうなぁって」


華蓮は頬をちょっと紅くしていた。


「ただの旧友だろ」


「ははは

そうだね

それに彩音に悪いしね……」


最後の言葉だけは涼介に伝わらない大きさで言った。


それから二人はラーメンを食べて解散した。

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