第46話【再開】
「あれ?
涼介じゃん」
金曜日の放課後も市民プールで一人、練習をしていた涼介は突然後ろから声をかけられた。
「えーと………もしかして宮村か?」
キャップとゴーグルをしているため顔は分かりにくかったが逆にその姿の方が見なれていたため、気がつけた。
「そうそう
てか、涼介が泳いでるなんて珍しいね」
「まぁな
ていうか、その口ぶりだとお前はよくここで泳いでいるのか?」
「まぁね
スクールが休みの時とかで泳ぎたい気分だった時は泳いでる感じなんだ」
楽しそうに語る宮村………宮村華蓮は涼介がスイミングスクールに通っていた時代の同期だ。
「相変わらず水泳は好きなんだな」
「うん
ていうか、なんで涼介は泳いでるの?
そーいう気分?」
「色々と事情があってな
水曜から練習してるんだよ」
華蓮とはそこそこ仲が良かったので普通に話せる。
「そっか
ならうちと同じメニューやる?
篠村コーチからメニュー渡されてるからいつもそれやってるんだ」
「あの人まだいたんだな」
「あれ?
嫌いだったっけ?」
「水泳のコーチで好きなコーチはいねぇよ
嫌な記憶しかない」
「確かに
練習とかキツイからね
特に篠村コーチは出来はするけど、超キツイって感じのメニューだからね」
こういう水泳をやってる人しか分からないような会話をするのは水泳を辞めてから一度もなかったので懐かしい会話だ。
「とりあえず私はアップしてくるから適当に流してて」
そう言いながら華蓮は空いていた涼介の隣のコースに入った。
◇◆◇◆◇◆
「キッツ……」
息を切らしながらそれだけ言った。
「ははは
涼介ダメダメだね
途中サークル回れてなかったじゃん」
「いや、久しぶりこんなのやったんだなら仕方ないだろ……」
少しずつ息を整えていく。
「いやいや、これはまだ楽な方だよ?」
「マジか……
でも、確かに俺が居た頃よりもちょっと楽なメニューだったな……」
「でしょ
てか、本当になんで涼介は練習してるの?」
「ワケあって1500泳がなきゃいけないんだよ」
「うわっ何それウケる」
なかなか泳ぐことない種目だからか華蓮は笑っている。
「でもなんでなんで?」
「まぁ、体育祭でな……」
「へー
なら、その体育祭までまたスクールで練習したらどう?」
願ってもいないような事だった。
確かにスイミングスクールで練習した方がフォームの指摘とかされるので練習することに関しては最も良いものだ。
だから、華蓮の申し出はありがたいものだった。
「出来んのか?」
「んー、まぁお金払えばいいんじゃね?
とりあえず明日聞いてみる!」
「よろしく頼む」
それだけ言うと涼介はコースから出た。
「あ、うちももう上がるから待ってて
うち涼介のRAIN持ってないから交換しよ!」
「あぁ、確かにそうだな
いいぞ」
断る理由も特にないので了承した。
◇◆◇◆◇◆
「ほいっ」
首元に急に冷たい感触が伝わってくる。
振り返ると華蓮がスポドリを首に当ててきたということがわかった。
「あげる」
「あざ」
それをすぐに受け取りすぐに飲む。
「今度パンケーキね!」
もう飲んでしまったので返すという選択肢はない。
「いや、普通に高いわ」
「良いでは無いか良いでは無いか」
「はいはい
いつかな」
「それ絶対食べないパターンだ」
「そんなことより早く交換するぞ」
「うわっ流した」
と言いながらも華蓮もスマホを取り出して、お互いRAINを開いた。
そして、友達登録をした。
「よし、じゃあコーチから了承貰ったら報告してくれよ」
「りょーかいであります」
何故か敬礼をする華蓮を見てから涼介は帰るために出口へ歩き出した。
「あ、待って!」
「ん?まだなんかあるのか?」
「ラーメン食べてかない?
お腹すいたでしょ」
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