第26話【初めての】

「それにしても先輩すごい顔ですね」


涼介はベンチで休んでいた。

先程のジェットコースターのせいでしばらく動けなかった。



「いや……誰のせいだよ…」


「先輩が乗るって決めたんたんじゃないですか」


凜華は自分は悪くないと言わんばかりの即答だった。


「あぁ……確かにお前辞めてもいいとか言ってたな…」


涼介は今になってここでやめるのは男としてのプライドが許さないとか思ってジェットコースターに乗ることを決めた自分に後悔した。


「さすがに今の先輩は見てられないので私なにか飲み物買ってきましょうか?」


ここで飲み物を買うという提案をするのはさすがは普段学校では気が利くキャラでやっている凜華だなと涼介は関心した。


「いや…俺も行く」


涼介はベンチの手すりのところを杖代わりにして立ち上がった。


「いや、さすがにそんなに弱ってる先輩を連れていくわけには行かないですよ」


見ていて危ないような覚束無い足取りで自販機に向かった。

凜華は慌てて止めたがそれでも涼介は買いに行くと言い張った。


「先輩無駄なところで頑固ですね」


これ以上涼介と議論していても時間を無駄に消費するだけだと理解し凜華は渋々了承した。


「お前に借りを作るのが嫌なだけだよ」


「ほんとにそれだけですか?」


凜華は涼介が動いたことによって悪化していないか確かめるついでに涼介の顔を覗き込んだ。


「あぁ、それにそろそろ気分も優れてきたしな」


涼介は凜華に顔を覗き込まれるのを避けるために顔を逸らした。


◇◆◇◆◇◆


「俺はスポドリにするけど、お前は何飲むんだ?」


自販機でスポーツドリンクを買うと近くのベンチに腰を下ろした。

涼介はスポーツドリンクを一気に飲むと一息ついた。

その顔はいつも通りの色になっており、もう心配はいらなかった。


「私はそーですね……」


スマホをいじり始めたと思うと凜華は涼介にスマホの画面を見せた。


タピオカドリンクのお店のようだった

どうやらこの遊園地にはそこそこ有名なあるそうだ。


「近くにあるのか?」


「はい、このエリアからだと5分くらいだと思います」


「じゃあそっちに向かうか」


この遊園地はかなり広く東京ドーム数個分の広さとパンフレットにも書かれていたが、東京ドーム自体がどのくらいの広さか分からないためハッキリとした大きさはわからない。


「先輩はタピオカドリンクって飲んた事ありますか?」


「いや、ないな

ああいうのは無駄に高い割に量が少ないし味がおかしいやつがあるからな、無駄だと思ってる」


食わず嫌いと言えばそれだけなのだが、涼介はイマドキの高校生とは言えない発言だった。


「あー、友達いない先輩は一緒に飲みに行く人がいないから飲んだことないんですね」


凜華には涼介の話が全く届いていないかのようだった。


「いや、だから俺は友達がいない訳じゃなくて…」


案内するため涼介の少し前を歩いていた凜華がこちらを振り返った。


「じゃ、今日が先輩の初めてですね」


もちろんタピ活デビューのと凜華は付け足した。


いや、わかってるから、ドキドキしてないから、うん…してないよ…?


「紛らわしいんだよ」


「なんのことですか〜」


凜華はとぼけたような口調で言った。


「さっきの言い方だよ」


「私買ってきますね」


凜華は涼介を無視して買いに行った。


◇◆◇◆◇◆


しばらくして凜華はタピオカミルクティーなるものをもって帰ってきた。


「じゃじゃーん

先輩は初めてなので一番オーソドックスなタピオカミルクティーを買ってきました」


涼介は笑顔で戻ってきた凜華を無視した。


「相変わらず冷たいですね…

まぁ、とりあえず1枚撮りましょ」


凜華は慣れた手つきでスマホを取り出すとカメラを起動した。


「さっ、先輩寄ってください」


今まで黙って凜華を無視していた涼介だがさすがにここでは黙っていられなかった。


「おい、離せよ…」


「えぇ、いいからこれ持ってください」


凜華は無理やりタピオカミルクティーを押し付けて持たせた。


「はいはいーじゃあ撮りますよー」


凜華は涼介が逃げないように涼介の肩に手を掴み涼介の持っているミルクティーに顔を近ずけた。


「先輩もっと顔近づけてくれないと写らないですよー」


「いや、写らなくてもいいぞ…」


涼介はそう言って断ったが凜華は涼介の頭を掴み無理やり近づけた。


「お、おい」


「はい、チーズ」


撮り終わると凜華は写っている確認した。


「先輩もっと笑顔で撮りましょうよ!」


「いいから飲むなら飲むぞ」


これ以上凜華を自由にしていると何が起きるかわからないためタピオカミルクティーを飲むことにした。


「あ、じゃあまず先輩から飲んでいいですよ」


「わかった」


涼介は凜華に言われるままストローに口をつけた。

最初にミルクティーを飲んでみたがかなり甘かった。

次にタピオカと一緒にミルクティーを吸って見た。

食感はグミのようなものでやはりこれも甘かった。


「甘い」


味の感想はそれしか出なかった。


「まぁ、そーなりますよね」


どうやら凜華も同じような味の感想を持っていたようだった。

一口飲んだタピオカミルクティーをテーブルの上に置くと次は凜華が飲み始めた。

凜華はいつの間にか涼介の向かいに座っていた。


「ん、甘いですね〜」


「これほんとに全部飲めるのか?」


「大丈夫ですよ〜先輩もいますし」


どうやら凜華は1人でこれを全部の飲むつもりは無いようだった。


「ちなみにタピオカにはタピオカチャレンジって言うものがあるって知ってます?」


「なんだそれ?」


涼介は聞いたことの無い単語が聞こえ聞き返した。


「こータピオカドリンクを胸に挟んで手を使わずにタピオカを飲むことですよ」


涼介は凜華からその単語の意味を聞くと思わず目の前にいる凜華でその光景を想像してしまった。


出来るのか…涼介は思わず凜華の胸をチラ見した。

大きさ的には無理ではないような……


「先輩、私でエッチな想像しちゃいました?」


涼介は慌てて今まで考えていたことを頭から消し去った。


「い、いいから早くそれ飲んで次の所行くぞ」

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