第21話【手作り弁当】
お昼休み、涼介が部室に入った時には既に凜華がいた。
「あっ、先輩遅いですよ〜」
凜華は既にお弁当を広げていた。
「俺にも用事ってものがあるんだよ
てかなんでいるんだよ…」
涼介は自分落ち着いた昼休みすら奪われるのかと覚悟した。
「いいじゃないですか
一緒に食べましょ?」
凜華はお弁当をこちらに向けてきた。
俺がお弁当持ってきてないと知ってやっているのか…
「あっ、まさか先輩ほんとにお昼ご飯食べないでいようとしたんですか?」
凜華はお腹を抱えて笑い始めた。
「いやぁ〜先輩がほんとに私の言うこと聞くなんて先輩Mですね」
凜華は笑いを抑えようとしているのかちょっと我慢している風だったがそれが逆に目立ちイラッとした。
「はぁ……帰るか」
涼介は荷物を持って部室から出る用意をした。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」
凜華は慌てて涼介を止めた。
「冗談ですから、先輩の分も作ってきましたから一緒に食べましょ?」
凜華は笑顔で言った。
その表情は誰もが断れなくなりそうなほど可愛いものだった。
「さっさとそう言えばいいだろ」
涼介は凜華から視線を逸らすために横を向きながら言った。
「あっ、照れてますね〜
また私の手料理が食べれて嬉しいんですね」
凜華はニコニコしながら涼介の分のお弁当も出した。
「とりあえず、有難く貰っておくぞ」
涼介は出されたお弁当に手を伸ばしたが凜華に止められた。
「先輩偉そうですね、先輩は私の奴隷なんですからもっと敬ってから取ってください」
涼介はやばく食べたいため、すんなりとその要望に答えることにした。
「凜華様ありがとうございます
この奴隷の私に凜華様の手作りを食べさせていただけるなんて嬉しい限りです」
涼介は適当に考えた文を棒読みで言ってお弁当をこちらに引き寄せた。
「すごい適当ですね……敬意がないですよ、敬意が」
凜華は2回も言って強調させたが涼介はお弁当の蓋を開け食べようとしていた。
「まぁ…いいです、食べる前からそんなに嬉しそうならこちらとしても満足です」
凜華は涼介が食べるところを頬杖をしながら見守った。
最初に卵焼きを取って口に入れた。
「美味い」
涼介はそれだけ言うと次に次におかずを取っては食べと繰り返した。
最初は笑顔で見ていた凜華だったが目の前で美味しそうに食べている様子の涼介をみて満足して、食べ始めた。
涼介はあっという間に食べ終えた。
「ご馳走様、美味しかった」
涼介は満足そうな笑を浮かべた。
「先輩のこんな笑顔初めて見た気がします」
凜華は驚きつつもそう言った。
「そうか?」
涼介はあまり興味がなく、冷蔵庫からコーラを取りだした。
「そーですよ、先輩の笑顔が見れるなんて作ったかいがありましたよ〜」
凜華も食べ終わりテーブルに身を預けながらそういった。
「お前の料理はどれも美味しかったからな
そこだけは褒めておく」
涼介は凜華を褒めすぎると調子乗りすぎるため、『そこだけ』を強めて言った。
「も〜私の事もっと色々褒めてくれてもいいんですよ〜」
凜華は水道にいる涼介の方を眺めながら言った。
「はいはいすごーい」
涼介は零さないように慎重に歩きながらそう言った。
「もー!それがてきとーなんですよ!」
少し怒ったような感じの凜華だったが涼介は凜華のら目の前に紅茶を置いた。
「あっ、ありがとうございます」
凜華は受け取るとすぐに口を付けて一息ついた。
「はぁ…まぁ、この紅茶に免じて許してあげましょう」
凜華はカップから1度口を離すとそう言ってまた口を付けた。
それから2人は落ち着いた時間を過ごした。
いつの間にか、休み時間が終わる10分前となった。
「よし」
涼介はソファーから立つと片付けをした。
「あれー先輩早くないですかー?」
凜華はスマホから目を離して涼介の方を見た。
「ちょっと舞に用事があるから逢いに行くんだよ」
そこは隠す必要がないので素直に言った。
「私も行ってもいいですか〜」
凜華のその言葉に涼介は油断しすぎたと思った。
「別にすぐ話して終わる用事だぞ」
涼介が舞に用事があるのは先週司から遊園地のチケットを貰ったから行かないかというものだった。
今週の土曜日にでも行こうと考えていたため、RAINで伝えるには遅いなと思い直接伝えることとした。
「なんか怪しいですね〜」
なんでこいつこういう時は感がいいんだよ
涼介はそんなことを思いつつも誤魔化すこととした。
「何がだ?」
そうとぼけて見せた。
「なんか今もですけど私から逃げようとしている感じがするんですよね〜」
凜華はそう言いながら涼介に近ずいた。
1歩1歩近づいてくるがそれに合わせて涼介も下がっていた。
しかし、下がるのにも限界がきて涼介はソファーに座る形になった。
逃げようとするも既に前には凜華がいるため立つこともできなかった。
「さー、先輩もう逃げれませんよ
逃げるってことはなにかやましいことがあるんですよね?」
凜華は笑顔で質問してきた。
その笑顔が今は逆に怖った。
「お前が近づいてきたから下がっただけだぞ」
実際下がったのにはそれも一因であった。
「それでもなんか怪しいんですよね〜」
凜華は鋭い目で涼介を観察し始めた。
そして
「んー、でもわかんなかったので気のせいですね、すみませんでした先輩」
凜華はそう言うと大人しく荷物を片付け始めた。
それが不気味だが今は都合がいいと思い涼介は部室から出た。
「お弁当美味しかった、また作ってくれよ」
涼介は最後にそれだけは言った。
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