第20話【2人の日常】

涼介の今日の朝は時間を持て余していた。

昨日の夜凜華からRAINで『お昼抜き』と言われたからだ。

別に守る必要は無いと思っているが、弁当を食べているところを見られたらめんどくさい事になりそうだと思い、弁当は作らず購買で買おうとしていた。


涼介はいつもの出かける時間になるまでスマホでWeTubeを見て時間を潰していた。


WeTubeとは世界で最も有名と言ってもおかしくないほどの知名度を誇っている動画サイトだ。


最近見てなかったため溜まっていたネタ動画を消化していた。


その時スマホの画面が急に変わった。

凜華から電話がかかってきたのだ。


一瞬無視しようかと思ったがそれでは後々めんどうなことになるので大人しく電話に出た。


「おっはよーございまーす先輩」


電話からは元気な声が聞こえてきた。


「朝からなんだ…」


涼介と凜華のテンションは正反対と言ってもいいくらい涼介はやる気が感じられない挨拶だった。


「も〜元気ないですねぇ〜

そんな先輩にはまたココアを買ってきてもらいましょう」


またしても凜華にパシリを頼まれた。


「俺のこと元気ないがないって言ってるなら気遣ってそんなの頼むなよ…」


「元気がないなら運動して元気になりましょう

てことで走って買ってきてくださいね!!」


わかっていたことだが涼介のちっぽけな抵抗は意味をなさなかった。

既に電話は切れており、言い返すことも出来なかった。


「はぁ…」


涼介は1人リビングでため息をついた。




◇◆◇◆◇◆


登校は昨日と変わらず、涼介がいつもの曲がり角に行くと既に凜華が待っている状態だった。


「あっ、先輩〜」


凜華は手を振って近ずいてくる。


「ほらっ」


涼介はそれに構わず買ってきたココアを投げた。

凜華は突然投げられたココアをギリギリでキャッチした。


「先輩危ないじゃないですかー」


凜華はムッとした表情で涼介を睨む。


「取れたからいいだろ」


そう言いながら涼介はココアのついでに買ったじっくりコトコトを空けた。


「そーいう問題じゃないですよー」


涼介は開けてすぐ飲んでいるので凜華の表情を見えていないが、まだムッとしているのだろう。


「はいはいすみませんでしたー」


涼介はとりあえず適当に謝った。


「もっと心を込めて言ってくださいよ!

私は先輩のご主人様ですよ」


凜華はこちらに手を向けてきた。

どうやらお手とやっているようだ。

涼介はそれを見えないふりをした。


「もー、つまらないですね、RAINの先輩は凄いノリ良かったんですけど」


「あんな会話すぐ終わらせて、早くWeTube見たかっただけだから」


そう言うと涼介はまた缶に口を付けた。


「そっちも美味しそうですね、1口くださいよ〜」


凜華はそう言うと涼介からじっくりコトコトを取った。


「ちょ、おいっ」


涼介がなんか言う声が聞こえるが遠慮もなく口を付けた。


「なかなか美味しいですね」


凜華は飲むとそのまま缶を持ったまま反対の手でハンカチを取り出し自分の口を吹いた。

その華麗な動作に涼介もつい横で一緒に歩いている凜華の口に目がいく。


艶がありとても美味しそうな唇

見ていると男としての本能を唆られるような口だった。


「あれれ〜先輩そんなに私の事見てどうしたんですか?

私に見とれちゃいました?」


凜華は涼介の方を向きウインクして見せた。


「ち、ちげぇよ、てか、さっさと返せ」


涼介は動揺し頬を赤く染めながら凜華から無理やり缶を取った。


「も〜照れちゃって強引な先輩ですねぇ〜」


凜華はそんな涼介の頬をおもちゃのように人差し指で突き始めた。


何回も何回も涼介の頬を突くと凜華は楽しいのか笑い始めた。


「お、おいやめろよ」


涼介は無理に凜華の人差し指から離れさっき凜華から取り返したじっくりコトコトに口を付けた。


間接キスなどと小学生のようなことを気にするよりも、今はあまりにも凜華との距離が近すぎて慣れなくて、妙に熱くなった体を落ち着かせる方が先決だった。


「って、中入ってねぇじゃねぇか!」


缶にはほとんど入っておらず、たまに水滴が落ちてくる程度だった。


「先輩が飲みすぎたんですよ〜」


凜華は目をあさっての方向にむけながらそう答えた。


「バレバレなんだよ」


涼介はそう呟くとまた凜華がなにか反論してきた。

そんな感じで涼介の最近慣れて日常になってきた凜華との朝を今日も過ごした。

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