第16話【賭けの結果】

週が明けてテスト期間が始まった。

テストは4日間で構成されており、1日2、3教科だけの為学校は比較的早く終わる。


そして、涼介の学校の先生は無駄にテストに対してのやる気があるとされているため、次の日には全ての教科の採点が終わっている。


そのため、涼介達の手にはテストの結果が届いていた。


昨日テストの解放感に浸りながら、夜中ゲームをしていた涼介は眠そうに机に伏していた。

そこに司がやってきた。


「涼介はテストどうだったの?」


いつも通り司は涼介の前の人の席に座った。


「まぁーいつも通りだったな」


欠伸をしながら涼介は机から体を起こした。


「あー、さすがだね」


司は涼介の点数が今回も平均77点だということを察して、笑っていた。


「そう言えば、凜華との賭けはどうなっているの?」


司は気になったのか涼介に質問してきた。


「あー、結局学年3位以内にはいったら凜華勝ち、入らなかったら俺の勝ちって無理やり決定されたなぁ…」


テスト期間の朝も2回ほど凜華と共に登校しており、その時にしつこく言われて逢えなく了承した。


「そっか〜

僕としてはそれで凜華の成績が上がるのは嬉しいかな」


それを聞き、何故か司はニコニコしていた。


「お前はなんだか嬉しそうだな」


自分のことではないのに涼介よりも楽しそうな表情を浮かべる司に涼介は質問した。


「だって涼介はこんな性格してるけど、信用しているからね、凜華を頼んだよ」


どうやら司は涼介と凜華が付き合うことを期待しているようだった。


「いや、頼まれても困る

第1俺はあいつに興味が無い、それにアイツはただ俺みたいなやつが珍しいだけだろ」


「でも、凜華とあんなに親しい異性の友達は珍しいからね

付き合うとか無しにしても嬉しいよ」


今日の司はいつもと少し違う気がした。

ほんとに少しだけだったが、長い付き合いの涼介はそれがわかった。


「俺になんか頼み事でもあるのか?」


涼介はめんどくさいことを言われるのだろうと分かっていたが自分から切り出すことで少々の覚悟を決めた。


「よく分かったね、実は…」


司はポケットからチケットを取り出した。


「これは遊園地の無料入場券なんだけど、来週で切れちゃうんだよね」


司の言葉に涼介はやっぱ聞かなきゃよかったかなと思い始めてきている。


「僕色々あって行けないから涼介が行ってくれないかな?

行った感想を裏に書いてあるURLのサイトに書いてくれればいいからさ…」


どうやら遊園地の評価のバイトを引き受けていたようだった。


「1人で遊園地か……」


司には借りがあるため、引き受けること自体はよかった。


「えーと、その事なんだけど……

男女のカップルで行くやつなんだよね……」


司は申し訳なさそうな感じで言った。


「あー、リア充バイトだなぁ…

まあ、舞辺りでも誘うか、司が俺と舞に飯奢ってくれるって言ってたといえばなんとかなるだろ…」


「ありがとね」


そう言うとドアが開き教師が入って来て、ホームルームが始まった。


「テストも終わったため、そろそろお前らの待ちに待った体育祭だがーー」


教師の言葉に喜ぶ生徒の声が聞こえるが今の涼介はそれが遠くに聞こえるほど眠かった。


やば……ちょっと寝るか


司辺りが起こしてくれるだろうと思い涼介は眠りについた。




◇◆◇◆◇◆◇◆


「待ってましたよ、先輩」


帰宅の波が終わり学校には目的がある生徒しか残らない時間になった頃。

そんな時間に帰宅しようとしていた涼介は下駄箱の前に待ち構えていた後輩に話しかけられた。


涼介は靴を履きそのまま外に出た。


「えっ、ちょっと先輩待ってくださいよ〜」


凜華は慌てて涼介を追いかけた。


「ちょっと健気に待ってた後輩を無視ですか!?」


凜華は涼介の隣にまで追いついた。


「いや、下駄箱の近くの窓から男子がお前のこと見てたし、その状態でお前と話して後で誰かに関係聞かれるのとかだるいし」


知らない人と話すのは色々と気を使うため、涼介にとってめんどくさかった。


「も〜、私たちの関係を言うのが恥ずかしいなんて先輩も可愛いですね〜」


涼介の言葉を聞くなり凜華はいつも涼介をからかうような表情になり始めた。


「いや、別に俺とお前は先輩と後輩って関係だけだろ」


涼介はなんの躊躇いもなくすらっと言った。


「もっと違う関係があるんじゃないですか〜」


凜華は楽しそうな声色で言った。


「例えば?」


涼介は別に凜華とは特別な関係ではないと思っているため他のことなんて思いつかなかった。


「主従関係ですよっ」


そう言うと凜華はどこから取り出したのか紙を涼介に見せた。


それは答案用紙で綺麗な時で中村凜華と書かれていた。

点数は……100点であった。


「お前頭いいんだなー」


涼介は適当に褒めた。


「えへへ、ありがとうございます〜

じゃ、先輩は私の奴隷ですねっ」


凜華は笑顔で物騒なことを言ってきた。


「いや、さっきから無視してたがどういうことだ?」


さすがに理解できないと思い涼介は質問した。


「忘れたんですか?

学年3位以内に入ったらお願いを聞くって」


それは確かに覚えている。

だが、それは順位と成績の発表は来週のためまだまだ余裕があるはずだった。


「覚えてはいるがそのテスト100点となんの関係があるんだ?

まさか、全教科100点とか言うんじゃないんだろうな…?」


有り得る可能性はその1つしかなかった。


「さすがの私もそれは無理ですよ

でも、学年3位以内って何でとは言ってないですよ?」


それを聞き涼介はハッとした。


「そーいうことかよ…」


涼介は今日1番めんどくさいと思った。


「じゃ、そーいうことでよろしくお願いしますね、奴隷先輩❤」


凜華は万遍な笑みを見せた。

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