第15話【賭けの提案】
今涼介は凜華を押し倒したような状態になっていた。
「先輩……」
凜華は甘えるような声を出した。
「とりあえず、すぐに離れる…」
先程玄関から扉が開く音が聞こえた。
それはきっと司が帰ってきたということだろう。
そのためすぐに退けなければならない。
しかし、凜華は涼介の首に腕をまわし、離れられないようにした。
「お、おい、どけろ」
涼介は凜華の腕をどうにか解こうとするものの解けなかった。
「先輩、楽しいですね!」
凜華は今日1番とも言える笑顔を涼介に見せ、手を離した。
ようやく手が離れたためすぐに退けようとしたが既に遅かった。
リビングルームの扉は開かれ、司にこの現場を目撃されてしまった。
「えーと……僕はお邪魔だったかな…?」
司は少し困ったような表情を見せた。
「い、いや、これは不幸な事故で…」
涼介はどうにか説明しようと試みた。
「先輩が私の冗談を間に受けちゃって押し倒されました〜」
凜華は恰も自分が被害者だと言うようなセリフを言った。
まぁ、被害者なのは間違えはないけど、俺も加害者という訳でもないだろ…
「おい、嘘つくなよ」
どうやら凜華は涼介が真実を言うことを邪魔しているようだった。
「とりあえず、その体制から戻ったら?」
「「あっ」」
離れようとした瞬間に司が来たため離れられず、そのままの体制になっていた。
だから、司の言葉を聞き涼介はすぐに凜華から離れた。
そのあと司が一人一人に事情を聞き事なきを得た。
「凜華もあんまり涼介をからかっちゃダメだよ」
司はいつも話す時のような口調で言った。
「はーい」
こいつ絶対反省してないだろ…
そのあと、凜華はトイレに行くと言って、帰ってくる時にはまた新しい服に着替えていた。
やはり、わざとあの服をチョイスしていたようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そのあと3人は2時間ほど勉強(涼介は写すだけ)をした。
「ふー、結構勉強したね」
司は一段落ついたのか口を開いた。
「そーだな」
涼介も一通り写し終わったようだった。
「先輩の場合は写すだけで苦労とかないですけどね〜」
凜華は少し前から勉強をやめており、スマホを弄っていた。
「それ言ったら最初に脱落したのはお前の方だろ」
「私の場合は十分に勉強しただけですよ〜」
「どーだかな」
凜華はニヤとした顔をした。
「じゃあ先輩、賭けをしましょう」
凜華は自信満々にそう提案した。
「私が学年3位以内に入ったら、私の命令を1回聞いてください!!」
学年3位以内か……確か一学年320人程だったかな
でも、さっきの問題がわかんないくらいだったら入っても50位とかだよな……
しかし、こいつのこの自信はなんだ…?
涼介は凜華にその可能性があるのかをじっくりと考えていた。
「賭けをして、成績上げるのはいいけど、イチャつくのは僕がいない時にして欲しいかな…」
司は先程と同じような苦笑いしていた。
「いや、別にこいつとはイチャつくような関係じゃないからな、」
涼介は誤解されてはめんどくさいため強く否定した。
「私は別に先輩とイチャついてもいいですよ〜
まっ、先輩決まりですね!」
司と話しているあいだに凜華は賭けを無理やり成立させた。
「お、おい…」
そのまま凜華はリビングから出ていこうとした。
しかし、扉を開き立ち止まった。
「ちなみに私が3位以内に入れなかった場合私が先輩の言うことなんでも聞きますよ」
凜華はそのまま不敵な笑みを見せ出ていった。
「はぁ……めんどくせ…」
凜華が出ていったのを見ると涼介はソファーにぐったりと倒れた。
「涼介、一応ここ僕の家だからね、ていうかすごく凜華と仲良さそうだね」
司は他人の家のソファーで倒れている涼介に対し軽く声をかけるだけで、止めさせようとはしなかった。
「仲良くなんてないぞ
ただ俺が遊ばれてるだけだろ」
涼介はめんどくせーと付け足した。
「それでも、凜華があんなに気を許すなんて珍しいよ」
司は何かを語り出すかのような顔をしていた。
「あっ、作ったクッキー出してなかったわ」
涼介はその雰囲気を壊すかのように、バッグから作ってきたクッキーを取り出した。
「あぁ、ありがとね」
司は涼介からクッキーを受け取るとお茶でも出しておやつにするかと聞いた。
「あと、俺帰るわ
写すの終わったし」
涼介はそのままバッグに勉強道具をしまうと出ていった。
「じゃ、また明後日な〜」
涼介はリビングから出るとすぐに玄関へ向かい扉を空け出ていった。
「ほんと涼介はすごいや」
先程語ろうとしていたのは自分の事に近いがメインは別の人のことであるため、不用意には言えなかった。
だから、一瞬でも語ろうとした司は誰もいなくなった部屋で1人椅子に座り、上を見上げて呟いていた。
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