第13話【後輩ちゃんの家へ】
土日と聞けばみなダラダラとすることを考えるだろうが、テスト前の学生にとっては全く違うものだった。
涼介も朝6時に起床し、食事を摂ったあとから勉強を開始するための準備をしていた。
「よし、出来た」
こんがりと焼けるバターの匂い。
レンジを開ければ、その匂いが部屋中を駆け巡る。
涼介は勉強するためにお菓子を作っていたのだ。
とは言っても涼介の場合そこまで勉強する必要はなく、最低限出された課題を行う程度のものだった。
時刻は既に10時を迎えており、勉強するにはちょうどいい時間だった。
そんな時、突然涼介のスマホが鳴った。
「誰だ、俺に電話してくるやつなんて2人くらいしか思いつかないんだが、」
涼介には親がいないため、親でもなく、親代わりの人は仕事で忙しく電話してきたことなど1度もない。
そのため考えられるのは友人だが、涼介は友達が少なく、こんな日に電話してくる人は2人ぐらいしかいなかった。
そんなことを思いながら涼介は電話を取った。
『もしもし涼介?』
「何の用だ?」
電話の主は司だった。
『今からうちで勉強しない?』
どうやら勉強の誘いだったらしい。
「別に俺は1人でもできるぞ」
基本土日は外から出ないと決めていた涼介はわざわざ誰かの家で勉強する気になれなかった。
『そう言わないでさ、僕が終わった課題を見せるから』
別に課題をやってもならなくても変わらない涼介にとって、司の申し出は有難いものだった。
「珍しくお前が優しいな、なんかあったか?」
涼介は有難いが少々不審に思った。
『別に意味なんてないよ、ただ今回のテスト少し不安なだけだよ、』
電話越しの声ではいつも通りであった。
「そーか、なら行く」
涼介はそう言うと準備を始めた。
『コーラ買って待ってるよ』
「ありがとな、」
そう言うと涼介は電話を切った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
準備が終わると早々に涼介は家を出た。
涼介の家から司の家まではそれほど距離がなく、5分もあればつく頃だった。
そーいえば、司の家に何度か行ったけど、毎回あいつはいなかったなぁ
涼介から司の家に招くことはないため、凜華がいない時を狙って呼んでいたんだろう。
そう思っていたら、既に司の家に着いた。
涼介はいつも通りインターホンを押した。
「はい中村ですけど、どち………
あっ、先輩じゃないですか〜」
どうやら声の主は凜華であった。
「おう、今日は司に呼ばれて来たんだ」
涼介は隠す必要もないので普通に言った。
「お兄ちゃんと一緒に勉強するんですか〜?」
「あぁ、そうだが」
何故わざわざ確認を取ったのか涼介は気になったがその理由が直ぐにわかった。
「私も参加しますね!」
そう言うと凜華はようやく涼介を招き入れ、リビングに案内した。
「じゃ、私着替えてくるんで、待っててくださいね、あっ、覗かないでくださいよ〜」
凜華はそう言うとリビングを出て行ってしまった。
階段を登る音が聞こえることから自分の部屋に行ったのだろう。
「いや、覗かねぇから、」
と1人残ったリビングで呟く涼介であった。
◇◆◇◆◇◆
凜華は着替えてくると共に勉強道具まで持ってきてた。
「さぁ、先輩やりましょ〜」
入ってくるなり凜華はそう言った。
しかし、涼介はテーブルで勉強どころか、テーブルにすら座っておらず、ソファーに座ってゲームをしていた。
「って、なんで先輩は人の家で堂々とスマホゲームをしてるんですか!?」
「よく考えたら俺は司に課題を見せてもらうために来たのであって、勉強しに来たわけじゃなかったわ」
涼介は視線を凜華にすら向けず、ずっとスマホを弄っていた。
「もー、スマホばっか見てないで私を見てくださいよ〜」
凜華の声が徐々に近づいて来ているのが分かり涼介は仕方なく凜華の方を見た。
上は肩が見えているような服で、下はショートパンツというものだと思う。
ファッションがイマイチ分からない涼介は凜華の格好を見て、ただ露出が多すぎないかとしか思えなかった。
「ど〜ですか?」
凜華は一回転して、服を魅せた。
「寒そう」
まだ秋と言うよりは夏に近いが凜華の格好はそれだけ肌が出ていると思った。
「も〜、先輩ファッションを分かってないですね〜、ホントに高校生ですか?
ていうか人間なんですか?
普通可愛いとか褒めたりしますよね」
凜華の言っていることは普通だったが生憎と涼介が持ち合わせていないものだった。
「あー、可愛い可愛い」
「てきとー」
涼介の態度に少ししょんぼりとしてみせた凜華だったが、涼介は本当に可愛いと思っているのだ。
普通に褒めたらまた弄ってくるだろ…
「さてまぁ、茶番はこのくらいにしておいて、始めましょうか、お勉強会
さっき連絡したらお兄ちゃんももう少しで来るて言っていたので」
涼介は仕方なく座って渋々課題をするのであった。
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